ろく

百日紅 Miss HOKUSAIのろくのレビュー・感想・評価

百日紅 Miss HOKUSAI(2014年製作の映画)
2.7
うーん、僕が杉浦日向子の大ファンだからもあるからだろうけど、どうも納得しないんですよ。

そもそも杉浦の漫画ってのは「余白」にあると思っている。大きな余白はそのまま考える余白も増やしてくれる。僕は余白を観てそのままじっと考える。じっと「江戸」に入り込む。時間は止まり、そこからただ「考える時間」が増幅される。そこが僕は好きなんだ。

でもこの映画はあたり前だけど「考える」前に次の画面になる。余白もなく「しっかり書きこまれる」。それなら杉浦の絵を、タッチを使う必要はないんじゃないのって思ってしまい乗り切れなかった。当然内容は好きなんだけど(結構原作に忠実)、僕に「考えさせる」作品でなく、僕を「促す」作品だったんだ。そこで僕は狼狽える。それがどうにもなぁ。

それでも江戸の「死ぬ」ことすらそのままさらっと行く(死は特別じゃない。当たりまえだ)展開は好きだ。僕らはあまりに「自分がいること」を特別に思ってしまっているかもしれない。僕らは「死んだらいなくなる」。それが当たりまえなんだよ。その当たりまえなところが杉浦の死生観だと感じている。杉浦はあっさりとリタイアしあっさりと死んでいった。死は終わりではないんだよとでも言うように「あっさりと」だ。もう少し、自分を「あっさりと」思うとこが必要なのかもしれないね。

声は俳優ばかりなんで、どうも違和感がある。その中でも違和感は立川談春。ああ落語は好きんだけどなぁ。なんでこの作品だと味も何もなくなってしまうんだろう。松重の声は逆にそれほど違和感はなかった。

杉浦の絵も好きだけど北斎の絵も好きだ。北斎の絵には茶目っけがたくさんある。どの絵をみてもタッチが違う。どこまでも絵が(いや「画」が)好きな人なんだと思う。一番好きなのは富岳三十六計でも妖怪の絵でない。「三体画譜」だ。なんともいえないただの動物の画だけどそれだけで癒される(あと女性とタコの画も大好きだけどこっちは下世話)。
ろく

ろく