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ブラックハットのTTのレビュー・感想・評価

ブラックハット(2015年製作の映画)
2.0
アカン、これはアカン。どうしちゃったんだマイケル・マン。こんなにもマン節が不完全燃焼で、つまらない映画とは…。

マンらしさがないわけではない。銃撃戦は相変わらず素晴らしい。中盤の銃撃戦は、コンテナに弾が当たる鈍い音や地下道で銃の音が響くのとか、マンならではのこだわりを感じる。また、敵が自動小銃をフルオートで撃ってくるのに対し、FBIの捜査官はガバメントで1発1発正確に仕留めていくという対比も良い。画面作りも誰が監督したのを知らないでその映像を観ても、マイケルマンが撮ったのが分かる。

だが、この映画は『ヒート』でのプロフェッショナル同士の奇妙な絆もなければ、『コラテラル』のようなリアリズムでありながら、寓話的な話へと展開したりもしない。残っているのは、銃撃戦と撮影スタイルという上辺だけのものと、『マイアミ・バイス』や『パブリック・エネミーズ』と最近のマイケル・マンが強調して描いている、男と女のラヴロマンスだけである。これがまた退屈なうえに、電車の中のカップルのイチャイチャを見させられているような胸糞悪さで、思い出すだけでイライラする。

別にラブストーリーを描くことがいけないわけじゃない。『マイアミバイス』だったら潜入捜査官が麻薬組織のボスの女と恋に落ちるというサスペンスになっていたし、『パブリック・エネミーズ』だったらそれが物語の主軸になっていた。しかし、本作の場合は、サイバー犯罪組織を追いかけるという本筋の話と全然絡まないうえに、唐突な感じで二人がくっ付き、そしてイチャイチャだけで1時間くらい割かれる。なので、話のテンポもものすごく鈍重。

っかそもそも劇中、敵の犯罪組織は主人公たちが追っているのを早い段階で知る。その場合、FBIの捜査の手が及ぶ前に、すぐさま次の犯罪を実行するが普通だ。だが、前述のようにイチャイチャに時間を掛けているので、「主人公たちのために待ってくれてるのか?」と思うくらい、犯罪組織の行動は異常に遅い。それによって、敵の実働部隊のリーダーは主人公たちに居場所を突き止められ、組織の真の狙いまでバレてしまう。国際的な犯罪をやってるわりに、なんかマヌケな奴らだなと思えてくる。

中国資本で映画を作ったからか、舞台が香港とマカオなのだが、あまりロケーションが活きていない印象。ジョニー・トーだったらもっとうまく撮っていたかも。

ラストの主人公が敵と戦うところに至っては、東映のやくざ映画のような防護の仕方と武器の隠し方に「ちょっと、待ってよ!」と失笑(荒唐無稽なくせに妙にディテールがリアルなのも含めて)。「オッ、粋だね」とも思わなかった。

結論としては、北米で記録的な大コケしたのも納得な愚作である。しかし、マイケル・マンがこんなことで終わるはずがないと信じている。なので、是非とも彼には原点に戻って、『ザ・クラッカー』や『メイド・イン・L.A.』のような作品を撮ってほしい。
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