TT

デッド・ノート/デス・ノートのTTのレビュー・感想・評価

4.0
*中二病こじらせたガキが、人の名前書いたら死ぬノートを拾って犯罪者殺し回る、同名漫画及びその映画化とは関係なし。

週刊少年ジャンプの漫画みたいなタイトルの映画だなぁと舐めていたら、これがメタクソ面白かった。
キリスト教における「贖罪」を取り入れたストーリーが独創的。緊張感の途切れない演出も素晴らしいし、役者もみんな良かった。ホラー映画ファン必見の快作と断言してもいい。

主人公の女性警察官が初出勤した田舎町の警察署に30年前に火事で死んだ男がやってくる。そして、男が持つ特殊な力によって、署にいた人間たちは未曾有の恐怖にさらされる。

本作は、田舎町にやってきた1人の男によって、町の住人たちが殺し合うリチャード・マシスンの『種まく男』を想起させるようなストーリーだ。しかし、『種まく男』における流れ者の男が巧みな言葉で住民たちを操っていたのに対し、本作に登場する謎の男はその人が過去に犯した過ちを強制的に思い出させる能力を使い翻弄していく。罪の大小問わず、忘れていたり、他の人にひた隠しにしていた出来事を会話しただけで思い出させ、その記憶を利用して操る。

メインの舞台が警察署なので、もちろん轢き逃げ犯やDV男が収監されている。しかも、どいつこいつも自分たちがやった事に対して全く反省していない始末。だが、男が現れたことで、彼らは自らの罪と向き合わなければならなくなる。

しかし、本作が面白いのは犯罪者以上に普通の人の方が凶悪だったという点だ。たまたま署にやってきた町医者はレクター博士級のサイコで、同僚の警察官もおもしろ半分で容疑者をリンチするやうなクズ、頑固そうな警察所長もキリスト教にどっぷり浸かり過ぎてトチ狂った最凶のキ○ガイであることが段々明らかになっていく。

謎の男が持つ力によって、あれよあれよと彼らの化けの皮が剥がれていく展開が、薄っぺらい集団劇になりがちなホラー映画に、深みのあるドラマ性を加味させている。そういった、緊張感を孕んだ人間関係をシンプルに見せていく語り口がとても秀逸だった。

そして、登場人物たちの本性が分かってからのクライマックス20分は、善悪の垣根が吹き飛ぶ怒涛の闘争劇へと雪崩れ込む。この大殺戮で繰り広げられるアクションシーンのキレの良さには驚かされる。狭い署内のセットを活かした動作とケレン味溢れるカメラワークは、低予算なのを微塵も感じさせない格好良さ。

また、ホラーとしての満足度も高い。顔面が潰れるゴア描写や、歯切れの良いカッティングでテンポよく見せる演出が上手く、ゴア描写を無感情に羅列しただけの映画とはわけが違う。

キャスティング全体にも味があって素晴らしく、画一的な顔選びしかできないハリウッド映画や日本映画ではこうはいかないだろう。中でも、正体不明な謎の男に扮したリーアム・カニンガムの演技は見事。彼の抑えた芝居と寡黙な存在感が、本作のストーリーを牽引していると言っても差し支えないだろう。
また、ポリアンナ・マッキントッシュが演じる主人公の女警官が抱えている過去のトラウマが『ザ・ウーマン』まんまで可笑しいし、警察所長役のダグラス・ラッセルの上半身裸に有刺鉄線ぐるぐる巻きのルックスでの大暴れ演技も見ものだ。

警察署という限定された舞台と登場人物が10人前後というスケールの小ささにも関わらず、脚本・演出・演技で乗り切ってしまっている秀作だった。この監督の次回作が楽しみだぜ!!。
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