こたつむり

96時間 レクイエムのこたつむりのレビュー・感想・評価

96時間 レクイエム(2015年製作の映画)
2.7
前作『96時間/リベンジ』の正統派続編。
フランス、トルコに続いて本作の舞台はアメリカ。
アクションは更に激しくなり、ドコドコバコバコと繰り広げるカーアクションが見どころの作品。

変な喩えで申し訳ありませんが。
本作を鑑賞した後に連想したのは、“星座とギリシア神話を物語の軸に据えて、少年たちが女神の化身を守る”という某少年漫画でした。

この漫画も最初のシリーズは好評だったのです。でも、次のシリーズでは展開が単調になって人気が下落。そのために週間連載最後のシリーズでは凝った展開になったのですが…途中で打ち切られて最終回は本誌で掲載されなかった…そんな作品でした。

そして、本シリーズも。
同じ流れなのですね。第一作目は容赦も躊躇もない主人公の“鬼”っぷりが爽快な作品でした。第二作目は前作の要素を尊重したためか、とても単調な作品でした。

そして、本作は。
主人公に降り掛かる災厄は誘拐ではなく冤罪。
敵の姿もなかなか見えず、中盤までは警察との追走劇。そして、終盤に分かる敵の正体。二作目との差別化を図るために変化球ばかりで彩られた脚本は、なかなか凝ったものだと言えます。

でもですね。某少年漫画と同様に。
“大切な部分”を見落として展開に凝っても、感情が付いてこないのですよ。というか、目玉であるアクションも、これまでは敵が“犯罪組織”でしたから“アタマを空っぽ”にして楽しめましたけど、本作で相対するのは主に警察ですし、巻き込まれるのは一般人ですからね。これでは“アタマを空っぽ”に出来ないのです。

それと、“大切な部分”についても。
結局、第一作目で描かれたものを如何に育てるのか、が重要なのです。だから、今更ながらに人間ドラマを盛り上げようとしても、感情が付いてこないわけで。本作で言えば、主人公が下水道から脱出した場面で「ノリに付いていけない」と思ってしまいました。ゴメンナサイ。

また、本作で重要なポジションを務める役者さんが“代役”というのもチグハグさが拭えません。どうせならば、新登場のキャラクタにしてしまえば良かったと思うのですが…。第一作目から観ている自分からすると、「え?この人誰?」って思ってしまいましたよ。

というわけで。
シリーズ物は前作を観ておいた方が楽しめる、というパターンが多いのですが、本作に限って言えば別。前作、前々作を観ていない方が先入観を抱かずに楽しめたと思います。
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