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グッドナイト・マミーのMikiMickleのレビュー・感想・評価

グッドナイト・マミー(2014年製作の映画)
3.6
監督はウルリヒ・ザイドルのパートナーで脚本家のヴェロニカ・フレンツ。
2014年シッチェスカタロニア映画祭グランプリ他、多数の映画祭でノミネート&受賞。
2016年アカデミー賞外国語映画賞 オーストリア代表


とうもろこし畑で鬼ごっこをする双子のエリアスとルーカス。
自然に囲まれた豪邸の一軒家。
彼らの元に、整形手術をして帰って来た母。
包帯でぐるぐる巻きになった母は、以前の優しい母とは違い、冷たく冷徹になっていた。
双子は、母が偽物だと疑いはじめ、正体を暴こうとするのだが…

最初のシーンで、双子の重要な秘密、ネタバレ部分はわかる人にはすぐにわかっちゃうと思います。それはそれでよいのです。
むしろ、それにより、それぞれの心の葛藤なんかが見えて深く観れると思うのです。
わかりやすいので、もしかしたらわざとそう演出したのかもしれない。

前半は、エリアスとルーカスの双子の目線で描かれます。ホラーではなく、サスペンスです。怪しげな母の行動… 母はいったい何者なのか…
そして、母に怯える二人の恐怖…

エリアスの見る夢。母のまっ裸での『ジェイコブス・ラダー』的顔ブルブル。お腹切り裂き…
あんな夢を見るほど、恐怖なんだろうなと…
自分の母親が別人だとしたら… まだ10歳にもならない少年にとって、それはどれほど恐ろしい事なのか…

その恐怖を引き継いだまま、後半はいきなり、胸くそ映画に早変わりします‼
これはなかなかのものです…怖いです。久しぶりに、怖いと思いました。色々な意味で。

物静かで落ち着いた雰囲気と、美しい映像美、少ない台詞、少年の美しさなどがこの映画の恐怖心を増長させます。

人里離れた森の豪邸。おしゃれで洗練されているけれど、どこか無機質…(『ムカデ人間』風)
意味深なインテリア
美しい自然の中で駆け回る双子
庭のトランポリンで飛び跳ねる二人と青空
それをカーテンレール越しに覗く母
降ってくる雹
見つけたカタコンベの骸骨の山
誰も見当たらない町を歩く、狂ったかのようなアコーディオン弾き
それらは、どこかしら、異世界のような気持ちになります。

湖に浮かぶエリアス。 クイズの答えがわからない母。 父の不在。母と同じ服を着た女性の写真。無くなった写真。水槽の猫…などなど、様々な伏線があるものの、それがハッキリとは解明されません。故に、見る人によって解釈が変わると思います。

オープニングで『サウンドオブミュージック』のトラップ一家が歌う「ブラームスの子守唄」の歌も意味深でした。「明日の朝、神様が起こしてくれるあなたは夢から目覚めるでしょうおやすみ」… オープニングなのに、エンディング。そしてこの歌詞。この映画の切なさとやるせなさを示唆しているようでした。

ヨーロッパ映画の美しさとロケーション、細かな演出、考えさせられる謎。後半、胸くそではあるものの、悲しい余韻を残します…良い映画です。

あと、ゴキブリ飼うのとか集めるとか、ほんっっとにやめよう……日本のゴキと違ってまるっこいからまだ見れるけど… 少年の考える事は謎だわ(笑)
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