やったカニ

コロニアのやったカニのレビュー・感想・評価

コロニア(2015年製作の映画)
4.5
緊張の糸が切れることがない。こんなにもスリルを感じた映画は久しぶりかもしれない。
そのスリルは、ホラーやスリラーで味わうそれとは異なり、やはりこの映画が実話をもとに作られ、少なからずドキュメンタリーの要素を持つからこそ感じられるのだろう。「これは映画だ」と割り切れない感じ。序盤のクーデタのシーンでも、拷問のシーンでも、その時代を生き、目撃してきた人々のことを頭の奥で考えてしまう。
エマ・ワトソンの惹きつけられる演技、美しい自然の風景と対称に不穏なコロニア・ディグニダの住人達。その非現実だが現実の映像にぐいぐい引き込まれていく。しかし、『ミッドサマー』然り、どうしてこうも美しい風景とカルトの親和性は高いのか。どちらも畏怖される対象だからかな。

本作では、コロニアディグニダからの脱出、逃走と、主人公の愛にフォーカスが当てられているため、コロニア・ディグニダ内部の凄惨な事実はそれほど描写されていない。どちらかと言えば、観客の心理的恐怖を煽る、婉曲的な演出が多かったと思う。(もちろん、直接的な暴力描写もある。)ただ、コロニア・ディグニダでは、少年への性的虐待や、人体実験も行われていたという。おれはこのことについてナチスの時代から遡ってもっと知らなくちゃならないし、同テーマを扱う『コロニアの子供たち』も観なくちゃと思う。ただ単に、「いい映画を観た」という感想でこの映画を消費してはならない。
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