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恐怖のエアポートの一人旅のレビュー・感想・評価

恐怖のエアポート(1971年製作の映画)
4.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
バーナード・コワルスキー監督作。

集団食中毒の発生した旅客機の恐怖を描いたスリラー。

元々はテレビ映画で上映時間70分超の作品ですが、緊張の恐るべき持続性で観客を画面にくぎ付けにしてしまう秀作です。大作並みの予算はなくても、またメジャーな俳優を起用しなくても優れた映画が撮れることを完全に証明しています。

ミネアポリス発シアトル行の旅客機で機内食のチキンが原因で集団食中毒が発生。同じ機内食を食べた機長と副操縦士も発症しやがて意識を失ってしまう。機体を操縦する人間がいなくなる中、ベトナム戦争時ヘリパイロットとして従軍していた乗客の男スペンサーに白羽の矢が立つ…という“航空パニック物”の中の一作ですが、食中毒をパニックの原因に設定した点が斬新です。乗客はラムとチキンどちらか一方の機内食を選ぶのですが、スペンサーを始めラムを選んだ人間には発症しない。チキンを食べた人間だけに食中毒の症状が現れるという展開がリアルです。

乗客の中のただ一人の医師ベアードやキャビンアテンダントのジャネットと協力しながらシアトルへの着陸を目指し操縦桿を握るスペンサーの恐怖と緊張がひしと伝わります。シアトル管制塔には機体の操縦に精通した老齢パイロットが待機し、無線を使って機体の操縦方法を一つ一つスペンサーに教えていく。各計器の見方や操縦レバーの操作タイミングなど操縦に必要な知識をスペンサーは無線を通じて一気に理解する必要があるのですが、これほどの緊張感と焦燥感のある遠隔授業は他に存在しないでしょう。クライマックスの決死の着陸劇までスリルと緊張が持続しています。

短い上映時間の中に航空パニックの醍醐味と主人公の悲痛な過去&現在を交錯させたトラウマ克服ドラマを同時に実現しています。飛行機嫌いの人にとっては、“機内食に菌が繁殖していたら?”という新たな不安要素がひとつ追加されることになる意地悪&飛行機嫌い助長映画でもあります。

ちなみに邦題は『恐怖のエアポート』ですが、恐怖に陥っているのはエアポート(空港)ではなく旅客機です。前年に『大空港』(1970)が製作されているので、それにあやかって付けられた邦題なのかもしれません。
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