ユーライ

天使のはらわた 赤い閃光のユーライのレビュー・感想・評価

天使のはらわた 赤い閃光(1994年製作の映画)
4.6
映画化されている『天使のはらわた』シリーズは全6作だが、曽根中生が監督した『女高生』と同じく何故かハブられている不遇の一作。理由は製作が日活ではなく兵どもが夢の跡、アルゴ・ピクチャーズだからだろう。Vシネとして販売されたらしく、ロマンポルノでもないのに定期的に濡れ場を挿入、初タッグとなる笠松則通の画はチャンネルNECOの画質が悪いせいかも知れないが、暗過ぎてよく見えない。ナイトシーンの許容量を超えた驚きの黒さ。いまいちどういう目的で作られたのか分からない謎の映画だが、かといって失敗作なのかと問われればさにあらず、90年代石井隆がいかに好調であったかを示す充実したサイコ・サスペンスとなっている。筋書きとしては『名美』に近い。雑誌編集者である名美は、レイプもののポルノを商売にする一方で、過去の性被害に悩み続けている。ある日見知らぬ内に連れ込まれたラブホで男の死体を発見、殺したのは自分に違いないと思い込むが、そこに村木がやって来て真犯人探しの巻となる。目出し帽を被った猟奇殺人鬼という設定は、暗黒劇画「魔楽」からのセルフ引用であろう。犯人像が二転三転するのもミステリとして秀逸だし、ついに本性を現すクレイジーサイコレズ速水典子との対決は、勢い心象が現実化したような観念劇と化す。男を嫌悪したままでいいのか、しかし女も信用ならぬのではないのかどっち付かずでブン投げのまま排水溝のクローズアップでジ・エンド。簡単には割り切れぬ複雑怪奇な人間心理が、映画でしか出来ない表現で描かれていると感じる。キーとなる裏ビデオを通して「川上麻衣子の裸目当てで観てるお前も同罪だ」みたいな突き付けをしてくる。いやー本当に酷い(褒めてる)監督だと思いますね……。
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