小波norisuke

エレファント・ソングの小波norisukeのレビュー・感想・評価

エレファント・ソング(2014年製作の映画)
4.0
若き天才と呼ばれるグザヴィエ・ドランが脚本を読んで「これは僕だ」と自ら出演を熱望したという本作。観ている間中、ああ、この天才は、なんて狂おしいほどに愛に渇えているのかと、苦しくなった。

精神病院の院長と看護師長というどちらも威厳のある大人を挑発し、翻弄する青年マイケル。彼の言動は、ドラン監督作品「Mommy」の少年と重なる。マイケルは、なかなか自分の本心を見せないから、観る側はおのずと院長と師長の目線に立たされ、彼らと共に苛立ち、不安に陥ることとなる。

徐々に明らかになっていく、マイケルの深い心の闇。同時に、院長と師長が抱える痛みもあぶり出されていく。観る側もだんだんと追い詰められ、じわじわと胸が締め付けられていく。

衝撃的な展開。赤い象。院長が漏らした言葉。その言葉に息をのんだ。

象、老眼鏡、チョコレート。謎の失踪、ダウン症の少女と情緒不安そうにみえる女、院長と師長の関係、オペラ歌手の母親。すべてのエッセンスが巧みに紡がれている。

すぐに咀嚼できないが、なんとも尾を引く。心をざわつかせる作品。
小波norisuke

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