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ヤギと男と男と壁とのodyssのレビュー・感想・評価

ヤギと男と男と壁と(2009年製作の映画)
1.0
【ヘタクソな真実】

(この映画がロードショウ上映された2010年に某映画サイトに投稿したレビューです。現在某サイトは消滅していますので、ここでしか読めません。時間の経過を考慮に入れてお読み下さい。)

まるっきり、まるっきり、まるっきり、面白くなかった。こんなつまらん映画も珍しい、というくらいつまらなかった。

リアリティがまったくないのが最大の原因だろう。何かの冗談か悪ふざけとしか思えず、しかも冗談だったらまだ笑えるはずだし、悪ふざけにしても共感できる部分があるはずなのに、それが皆無。シロウトの作った5流映画が何かの間違いで商業ルートに乗ってしまいました、という程度。

「あなたが思うであろう以上の事実にこの映画は基づいている」と最初に断り書きが入るんだけど、制作側に分かっていないのは、事実をそのまま映画にしたって面白くもなんともないってことなんだな。われわれは生の事実を知りたくて映画館に足を運ぶわけではない。事実をそのまま映画にすれば傑作になるわけでも、観客を魅了することができるわけでもない。

だから「事実」は落とし穴でもある。映画を作るとき、制作側はいかに観客に自分の意図を分からせるかをまず考えるべきなのに、「事実」であるためにそのまま観客に受け入れられると思い込んでしまうからだ。

上で私は「リアリティ」という言葉を使った。ウソ八百の映画だってリアリティがあればわれわれはそこから何事かを学ぶのだし、逆に事実をそのまま映画化したってリアリティがなければそんなものは屁でもないのである。この映画は、屁にすらなっていない。ヘタクソ、カネ返せ、でしかないのである。

最近のジョージ・クルーニー、出来の悪い変な映画によく出ているような印象があるんだけど(『フィクサー』だとか『マイレイージ、マイライフ』だとか)、大丈夫かな。自分の資質と作品がズレていることにどの程度自覚的なんだろうか。別に彼のファンでもないんだけど、ひとごとながら心配だ。
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