てるる

U.N.エージェントのてるるのレビュー・感想・評価

U.N.エージェント(2008年製作の映画)
3.8
彩プロが珍しく良い仕事してる。

ボスニアで起きた"スレブレニツァの虐殺"をテーマにしたテレビ映画。
昨年公開された「アイダよ、何処へ」とセットで観るとより理解が深まる。

この映画は虐殺が起きた当時と、その戦争犯罪を暴こうとする捜査官と協力者達を描く。

主人公は架空の人物だけど、実際にこの捜査をしていたフランス人捜査官の著作を元にした実話。

「アイダよ、何処へ」でも描かれてたけど、目の前の暴力を止められないオランダ軍(国連軍)。

そして男女別でバスで輸送されるムスリムの人達。
彼らのその後がキツすぎる。

虐殺が行われたことは明らかだけど、証拠が無いと捕まえられない。
捜査官達は地道に証拠を固めていく。

この事件の恐ろしいところは、今まで隣人だった人達が加害者になったこと。
この映画でも、「教師だった人」や「教え子」、「夫の友人」達が牙を剥いたことが分かる。

そして虐殺が認定された後も中心人物だったムラディッチやカラジッチが英雄視され、長年逃げおおせていたのが驚き。

そこだけフォーカスするとセルビア人が人間とは思えない人達にも思えてしまう。
しかしそこには歴史上の根深い民族・宗教争いが関係しているから難しい。

もちろん楽しんで虐殺や暴行、略奪に加担したクズどもは論外だけど、セルビア人の中には従わなければ殺されるから仕方なく…という人もいれば、虐殺への加担を拒否した人、捜査に協力した人がいたのが救い。

作品としては意義のあるものだけど、そこに捜査官とクララのロマンスだけは要らん。

テレビ映画とはいえ、ブノワ・マジメルという名のある俳優を使ってるから無駄にフィクションを入れたくなったんだろうか…。
てるる

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