TAK44マグナム

サベージ・キラーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

サベージ・キラー(2013年製作の映画)
4.2
「地獄でさまよえ!!」

最初に断っておきますが、本作はれっきとした純愛映画であります。ホラー映画の皮をかぶってはおりますが、あくまでも切なくて哀しい純愛映画なのです。
純愛映画なのにタイトルが「野蛮な殺人鬼」・・・原題は単に「野蛮」。
・・・何故か?
それは、本作の内容が、田舎町で美人さんが凌辱され、ゾンビとなって蘇り、憎たらしいゴロツキどもに復讐を果たすという、アルティメットなゾンビ+リベンジ映画なのだからであります!
す、素晴らしすぎる!!

普段であればこういったゲテモノ映画は、ついついおちゃらけたレビューを書いてしまいがちなのですが、不覚にもラストで涙腺が緩んでしまったほどの感動作なので大真面目にレビューしていきたい所存です。

亡くなったお父さんから形見の車を贈られたゾーイは、恋人のデインと結婚するために遠く離れた街へと出発。
旅の途中で写メを撮ったりしてルンルン気分のゾーイでしたが、ニューメキシコのとある街に入ったところで事件に巻き込まれ、人種差別主義者のゴロツキたちに拉致されてしまいます。
このゴロツキたちがとにかく嫌な奴らでしてね。
ネイティブアメリカンの大酋長の頭蓋骨を見せびらかしては、「俺の曾爺さんがぶっ殺してやったんだぜ~!いまは俺らがあとをついでぶち殺してまわっているんだ、HAHAHA~!!」と宣うという始末の悪いスーパーボンクラの集まりなんですよ。
こんな奴らに好き放題されて、挙句の果てに殺されて埋められちゃうゾーイが不憫で仕方ないのですが、偶然にもゾーイを発見したのがネイティブアメリカンの呪術医のオッサンでして、
「あんれまあ、こんな美人さんに酷いことしやがる。よし、ワシの秘術で助けちゃるぞ!」と一念発起!
なんだかよく分からない儀式を施したら、なんと信じられないことに死んだはずのゾーイが大復活ですよ!
しかも、余計なことに100年前に白人に殺された大酋長の魂が勝手に融合しちゃったではありませんか!
とりあえず蘇っちゃったんだからやることは一つという事で、ゾーイ+大酋長はお互いの仇であるゴロツキ共に壮絶な復讐をはたしてゆくわけです。
どのぐらい壮絶かというと・・・
①小腸をえぐりだして引っ張りまわす。
②弓矢でハリネズミのようになるまで矢を刺しまくる。
③豪快にヤリでぶっ刺す。
④心臓を取り出して握りつぶす。
⑤首チョンパ
・・・といった、程よい残酷具合。
殺られる側が自業自得なので何の同情心も湧きません。それどころか、もっと酷い目にあえばいいのにと願ってやまない今日この頃でしたよ!
すでに死んでいるので決して殺せないゾーイにビックリ仰天のゴロツキ共。
彼らに迫るゾーイの姿はターミネーターの如く、完璧なる殺人マシーンなのでありました。
しかし、そんなゾーイにも弱点があったりします。
呪術医のオッサン曰く、「もう少し早く魂を戻せていればゾンビなんぞにならずに済んだのじゃが、残念じゃ」らしいので、ゾーイは生き返りはしましたが肉体の崩壊は避けられない運命なんですね。
・・・ということは、早めに秘術を使えば、死んだ人も簡単に生き返って、しかも健康な身体でピンピンしてられるって事?
マジっすか。それはそれでものすごい事なんでは・・・と、ちょっと思ったりもしましたが、それはともかく、ゾーイが行方不明になって心配で駆けつけたデインにも、死にゆく運命である己の姿を見せられない可哀相なゾーイが泣かせます。

ゾーイ役の女優さんは3年もの間、この役を体当たりで演じ続けたらしいのですが、本当にありとあらゆる大熱演。
有刺鉄線で縛られちゃうわ、走っているトラックの荷台でナイフ使いと格闘するわ、チェーンソーとチャンバラかますわ、身体にはウジがわくわ、これでもかのドイヒーなシチュエーションの数々に、普通の女優さんなら「こんなのに3年も関わってらんないわ!」と裸足で逃げ出しても仕方ないところを、観ているこちら側が「そんなに頑張らないでもいいから、ちょっとこっちきてお茶でも飲んでリラックスしましょうよ」と思わず労いたくなるほどの肝のすわったプロフェッショナルぶりに頭が下がる思いでいっぱいです。
まったく知らない女優さんでしたが、ルックスも良いし(劇中の80%ぐらいはズタボロメイクですが・・・)、もしかしたら後世に名をのこす大女優になるかもしれません。
ラストの切なさ大爆発の名シーンは涙なくして語れませんが、それほどの名演技でしたよ。

宣伝文句などからは、よくあるポルノまがいのリベンジ女子映画と想像してしまいがちですが、オッパイも何も出ないところが下手に商業的な臭いがしなくて、「俺たちが作りたいものを作るんだ」という作り手の崇高な魂を感じ取れて好印象でした。オッパイ無しでも許せる映画があるなんて思いもよりませんでしたが、世界は広いですね、ありましたよ!

完成までに、実に6年もの時間がかかった本作。
低予算なのは否めませんが、溢れるアイデアとセンスでそれを見事にカバー、そんなにショボさを感じさせません。
それどころか本当に面白い。
DVDのパッケージばかりが立派なヘッポコ駄作ばかりを連発しているどこかの製作会社や、予算が無いことを言い訳にして素人学生が文化祭の出し物で作ったような安っぽいホラーを堂々と世に出して小銭を稼いで満足している我が国の自称業界人たちは、この映画を観て猛省して欲しい!
低俗なホラーだって、これだけの情熱をかければ傑作が生まれるんですよ!

・・・とは言うものの、1作だけじゃ何とも言えないので、監督さんの次回作に期待したいと思います。
まさか、また6年ぐらいかかるのかどうか分かりませんが・・・


レンタルDVDにて