すずき

マウス・オブ・マッドネスのすずきのレビュー・感想・評価

マウス・オブ・マッドネス(1994年製作の映画)
3.7
精神病院に連れられていく男がいた。
彼の名はトレント。
事の始まりは、保険調査員だったトレントが、人気ホラー作家サター・ケインの失踪事件を調査する所から始まる。
事件は全て「やらせ」ではないかと疑う現実主義のトレントだが、ケインの小説を読んでいくうち、トレントの身の周りに怪異が現れ始める。
やがて小説の舞台である町にケインがいるのでは、とトレントは思い始め、地図にない町・ホブにたどり着くのだが…

カーペンター監督が「遊星からの物体X」「パラダイム」と同じく、ラブクラフト愛に満ちた作品。
直接クトゥルフ神話の名前こそ出ないものの、それを意識したネーミングだったり、かなりラブクラフト感強い。

この映画のキモは、現実の世界が、本来非現実であるはずの小説の世界に、徐々に置き換わっていく所。
つまり「現実vs虚構」のお話だ。
もし自分が正常でも、周りの人間の九分九厘がクトゥルフ神話をリアルに信じてるような狂った奴らばかりだった時、本当に異常なのはどちらの側か?その状況でも、自分はそちら側に行かない、と確信出来るか?

読めばSAN値減少し、やがて狂ってしまうという「ドグラ・マグラ」のようなケインの小説は、彼のファンが増え、それを信じる者が増える度に力を増していく。
物語が現実を改変するほどの力を持った時、因果は狂い、小説の存在が先なのか現実の存在が先なのか、分からなくなる。
世界の形は不明瞭となり、やがて自身の存在さえも…という、そーゆーの好きな人にはたまらない映画。