MikiMickle

チャッピーのMikiMickleのレビュー・感想・評価

チャッピー(2015年製作の映画)
3.7
2016年南アフリカ、ヨハネスブルク。
犯罪が多発する中、AIの人工知能で動くロボットが開発され、警察として活躍していた。
開発者のディオンは、壊れて廃棄処分になった22号をこっそり持ち出し、人の心をもたせる事に成功する。しかし、ギャングに奪われてしまう……
22号はチャッピーと名付けられ、急速に成長していくのだが。

一方、人の脳波で動かすロボットをつくる、ライバルのヴィンセントの企みもあり…


監督はニーム・プロムカンプ。南アフリカ共和国出身の彼は、毎回きちんと「差別」について描いています。南アフリカといえば、アパルトヘイトにより、原住民の黒人が富裕層である白人に隔離され、ひどい差別をつい最近まで受けていた国です。
無名監督のSFながらも、アカデミー賞各部門にノミネートされた『第9地区』は、エンターテイメントとその独自の発想と辛辣な差別批判と、全てがあわさった素晴らしい作品でした。
次の『エリジウム』でも、格差批判をエンターテイメントとして消化しています。

では、今作。
まず、チャッピーを作り上げたのがディオンがインド系であるとこ。悪役であるヴィンセントが軍隊上がりの白人である事。そこに、監督の意図を感じざるを得ません。
そして、チャッピーへの仕打ちもまたその差別的要素を考えてさせられます。 チャッピーへの人間のいじめシーンは、見ていて正直嫌な気持ちになりました。人ではないのに、人の気持ちを持ったロボット。見た目が違うだけなのに…

この映画は人間の悪と善を描いている作品でもあります。
私は、ほんとに勝手な見解だけど、SFには人間との非なるものの対比が必要だと思うのです。善悪・日常と非日常・夢と現実・人間味と機械的なもの。
で、それらの一般的な、機械は機械…創造物は創造物…みたいな常識を覆すのが、よいSFではないのかと。
あ、SFにそれほど詳しくないので、間違っていたり当たり前だったりしたらごめんなさい。
で、この映画は正しくそうだなと…
人間の敵とみなされるチャッピーは、正しくそうだなと…

で、本質にあるのは、チャッピーの成長記録なのです。
5日間しかバッテリーが持たず、その短い時間の中で成長、影響、反抗期、そして愛を学んでいきます。
このチャッピーが可愛らしくて仕方ありません。22号であったチャッピーが、いつも破損するダメダメロボットな所からも、愛情を感じるのです♪

また、チャッピーへの母性愛を惜しみ無く表す、見た目は変な強盗団一味のヨーランディの愛情にかなり心を打たれます。オリジナルチャッピーTシャツ作ってるし。

アートワークも楽しい♪
このヨーランディとニンジャ夫婦の髪型や、ピンクと黄色のカラフルマシンガン、廃墟の住み処の落書きとかも、すっっっっごい可愛いの♪
それだけでこの二人に愛着がわいてしまうのです。
この二人、ほんとの夫婦で、ダイ・アントワードという南アフリカで人気のラップグループらしいです。アートワークも全部二人のもの。劇中の歌も。

あとヒュー・ジャックマン。髪型が面白い(笑) 完全悪役でもいけるね‼ちょっと憂いを帯びてるところが良いのではないでしょうか。
髪型がおかしな人ばっかりでてくるな(笑)

現代版ピノキオともとれるけれど、ただ人間になりたいというものではない。
悪に育てられれば、悪は当たり前になってしまう。そして、人間の悪を描いている。

SFアクションです‼ ドンパチあり、バイオレンスもあり。楽しい♪怒涛の勢い!
あまりに中後期に盛り上がりが来すぎて、ほんとの後半が中だるみになる所はありましたが、それでも、きちんと絞める変なラストがあります。ホラーなラスト。 このラスト、好き嫌いがわかれるな。
MikiMickle

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