エクストリームマン

ナイトクローラーのエクストリームマンのレビュー・感想・評価

ナイトクローラー(2014年製作の映画)
5.0
ジェイク・ギレンホールの作品選びには本当に、毎度感服させられる(プリンス・オブ・ペルシャ?なんのことだ)。宣伝では「ダークヒーロー」とか紹介されてたけど、そういうのじゃねーし!と観終わった今なら言える。まぁ、とにかくヤバいヤツが主人公だってことは間違いない。

インターネットから引いてきた最もらしい御託を並べながら、隙あらば相手の喉元を食い破っていくような、完成されたサイコパス/ソシオパスである主人公が、ついに天職=ニュース素材を集める「映像版のパパラッチ」を発見、のめり込んでいく。

あまりにも空疎な虚飾と嘘で塗り固められた主人公の言動とは裏腹に、エスカレートしていく「演出」「ストーリーの想像できる場面」を構想し、画を奪いに(この表現がしっくりくる)いく主人公の表情は活き活きしていたのが興味深いところ。彼の当初の目的は金や仕事だが、やがてそれはより過激で刺激的な映像を撮ることそのものへと変わっていく……

主人公:ルイス・ブルームを演じるジェイク・ギレンホールの演技がなによりもまず素晴らしい。この映画の為に体重を落としてまで役作りしたそうだけど、相当ハマっている。彼の持ち味であるあどけない笑顔でさえ、この映画では狂気を秘めたサイコパスの笑顔にしか見えない。そういう意味で、照明の加減とか演出が本当に絶妙。特にレストランと車内で「ギャラの交渉」する場面はトリハダモノ。その他、立ち方、歩き方、カメラの構え方も含めて全身で演じきっていた。

主人公の相棒(と見せかけて……)のリックも良かった。絶妙な脇の甘さ。バカではないけど、気づくことができない、そういう役回り。怪物を前にしたときに発揮すべきなのは、良心ではなく、恐怖心と逃亡する勇気。

レネ・ルッソ演じるニナも、単純なようで複雑なキャラクターだ。彼女はある意味でショーとしてのテレビ/マスコミというものを体現している存在だが、初期の段階では未だ常識の内にいる。しかし、映画が進むに連れて、主人公と影響し合う形で「次の段階」へと登っていった。ラストでは、主人公への畏れや不信感は尊崇の念へと変質し、同じ地平に辿りついたのだろうか。

場面による映像の切替、音楽の使い方、その他全てが脳からアドレナリンを搾り出してくれる最高の映画だった!