ぼの

とうもろこしの島のぼののレビュー・感想・評価

とうもろこしの島(2014年製作の映画)
3.2
無駄なBGMを排して必要最低限に留め、これでもかっていう絶妙なタイミングで音楽をぶつけてくる演出は秀逸。トリコロール三部作を彷彿させた。
BGMに加えて会話もほとんどないため、基本的には風や水といった自然が奏でる音と建築や農作業などごく普通の人間の営みから生じる音のみが聞こえる。
そのなかで時たま響く銃声が不協和音として耳に残り、直接的ではないが製作者の平和を求めるメッセージを感じた。

が、メインテーマは「戦争」って感じではなかったかなと。どちらかといえば大自然のなかでの人間の営みであったりだとか少女の性への目覚めであったりに焦点を当てているように感じた。特にラストの老人の決意を新たにしたような表情からは、戦争云々よりも雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズな人間の強さを描きたかったのかなあくらいの感情しか湧いてこなかった。
(負傷したジョージア兵が姿を消し、少女が涙するシーンは民族の違いというそもそもの戦争の原因を描いたシーンではあったが)

日本語版公式サイトにも書いてあったが良くも悪くも寓話的。ひょっとしたら僕が気付かないような反戦的なメッセージが劇中の様々な場面散りばめられていたのかもしれないが、それならば少しわかりにくかったかなと。

不器用な老人と思春期の少女のどこかぎこちない関係と2人の生きるための営みが2時間弱に凝縮された見応えのある作品ではあったが、「みかんの丘」があまりにも強烈だったため物足りなく感じてしまったってのが本音です。(同時上映なのがよくないよね。どうしても比べちゃうもん)
ぼの

ぼの