とうもろこしの島の作品情報・感想・評価

とうもろこしの島2014年製作の映画)

Corn Island/Simindis kundzuli

上映日:2016年09月17日

製作国:

上映時間:101分

3.8

あらすじ

ジョージア(グルジア)と、ジョージアからの独立を主張するアブハジアは、1992年以降、激しい戦争状態にあった。両者の間にはエングリ川が悠々と流れている。この川は春の雪解けとともにコーカサス山脈から肥沃な土を運び、中洲をつくる。両岸で兵士がにらみ合い、銃弾が飛び交う中、アブハジア人の老人と孫娘は、昔からの風習のとおり、今年も中洲の小島に小舟で渡り、小屋を建てて、土を耕し、とうもろこしの種をまき、苗…

ジョージア(グルジア)と、ジョージアからの独立を主張するアブハジアは、1992年以降、激しい戦争状態にあった。両者の間にはエングリ川が悠々と流れている。この川は春の雪解けとともにコーカサス山脈から肥沃な土を運び、中洲をつくる。両岸で兵士がにらみ合い、銃弾が飛び交う中、アブハジア人の老人と孫娘は、昔からの風習のとおり、今年も中洲の小島に小舟で渡り、小屋を建てて、土を耕し、とうもろこしの種をまき、苗を育てる。戦闘は悪化し、ある日、傷を負った若いジョージア兵がこの島へ逃げこんでくる…。深い森と大河の悠々とした流れ、ときおり聞こえる銃声、とうもろこしを黙々と育てる老人と孫娘――セリフを極力抑えて、大自然のめぐりと人間の営みを対比させ、戦争の意味を問う寓話的な傑作。

「とうもろこしの島」に投稿された感想・評価

Naoko

Naokoの感想・評価

3.8
水の音、風の音、鳥のさえずり、たまに聞こえる人の話し声が妙に響いて、違和感を感じるほどの台詞の少なさ。銃声なんて何をか言わんや。

私、時々キャンプをするのですが、そんな自分が恥ずかしくなるような大自然の中で老人と少女が生活を作り上げていきます。少女の成長も自然の一つ。ここでは執拗に描写されるのだけど、成長とは変化することだから何とも不安定で危なっかしい。特に性は相手を必要とするものなのでね。圧倒的な自然の中、人の織りなす不思議な緊張感で映画は進んでいきます。

言葉が少ないので、ひたすら人間を見つめながら映画は進行します。人間を通して、いずれも強大な自然と非自然が浮かび上がって、その渦に巻き込まれる非力な人間の営み…。なにかのだまし絵みたいに、一点を見つめていると視点がぐるりと変わるようなショックを受けました。

このレビューはネタバレを含みます

同じジョージア(グルジア)映画の『みかんの丘』が良作だったので、対の作品として鑑賞したのだが、いやはやそれ以上に素晴らしかったので、珍しくマジメにレビュー(笑)。

本作は戦争(紛争)が背景にあるけれど、主軸は農民の生活、その春から秋までをひたすら淡々と描いていく。ソバカス美少女の涼やかな眼差しが終始印象的。

序盤の島上陸から、老人と少女が物資を運び、家を建て、とうもろこしを育てる。大変に地味で、二人の生活は最低限の知恵のみであり、一切の装飾がない。微かに少女には思春期の人間らしさを感じるけれど、単純に「生きる」ことのみが彼の目的であり全てという生活だから、暮らしの中に会話もない。

彼らは、川の向こうにある紛争には興味がない。というか最小限にしか関わらないようにしているわけだけど、本来「川」とは「国境」を示すものなので、その中洲にて無干渉に生活する農民が戦争とは超越した存在だと言える。

また面白いのは、コツコツと生活を重ねる二人が言葉通りの「農耕民族」に対し、戦争で領土を争うグルジア人達は他者と競争する「狩猟民族」という対比図にもなる。あるいは、中洲での暮らしが「植物的」に対し、両岸の兵士は「動物的」とも言える。それらが戦争の無情さを際立たせる。

にしても、島にとうもろこしが実る段階までくると、上陸から老人たちの努力を鑑賞してきた身としては鳥肌が立つ。まるでシムシティで街づくりをしたかのような。彼らの暮らしには一切の娯楽要素はないが(少女には僅かにときめきの瞬間はあるが)、無の島から最期の収穫まで築き上げた経緯を見ていくと、農民とはなんと素朴にして偉大だなぁと。彼らには武力がないゆえに、紛争中の兵士たちにはヘーコラするしかないけれど、黒澤明「七人の侍」の如く、「結局いちばん強いのは農民だ」を思い出す。

翌年の春、新たな農民?と思われる男がまた中洲にのぼり、暮らしを始めようとして映画は終わる。人が生きることは、本質的には素朴ながらもこうして永遠に繰り返されてゆくのだと、悠久の時間を感じさせて物語は幕を閉じる。
コーカサスの紛争と大自然の中で一人の少女が一人の女性へと成長していく。多くは語らず、彼らの目と表情が全てを物語る。

2年前に見損ねた物をついに見れた、コーカサスの紛争は、当人たちですら顔だけでは敵か味方か区別がつかないような人たちが一言目に国籍を確認し二言目には銃を向ける、本当にやるせない
なすび

なすびの感想・評価

5.0
とてもよい
久し振りに留学行ってる友達に会いたくなった…彼とこの映画を映画館で見て余韻に浸りたかったなぁ、きっと彼も気に入ってくれると思うのでお勧めしよう。

中洲に家を建ててとうもろこしを植えて、1つ1つの作業を丁寧に切り取っているので見ていてすごくきもちいい
孫の着ている服がいつもスケスケなので「もう少し肌隠そう!」と気が気でなかった…それにしてもそばかす娘フェチなのでこの子好きだったァ

「みかんの丘」も見ねば
Tangerine

Tangerineの感想・評価

3.3
わけもわからずに観てると、ここが戦場という事に気がつかない。

製作国グルジアってなってるけど、ジョージアですから。
牛丼

牛丼の感想・評価

3.8
最近「みかんの丘」を観て、そういえば2年前新保町でふらっと観たのを思い出した。日記に感想を書いていてよかった。

アブハジアの老人は若い孫娘と共に、雪融け水の氾濫で堆積した中洲にとうもろこしの畑を作る。何もない土地を拓き、家を作り、魚をとり、とうもろこしの苗木を植える。
セリフ少なく、多くは語られないが、自然の中の原始的な営み、野山の音、人の息遣い。美しく長閑な映像と細やかな音声の連続にただただ息を呑む。
そんな中で対岸から聞こえる銃声から、アブハジア紛争の一片が垣間見える。戦争は対岸の火事ではない。
最後がとてもショックだったが、あの最後だから良い。
自分の美しさに気づいていない孫娘が一番美しいよ。
中州に植えられたトウモロコシ畑と老人のDIY…画がとても映えわたる作品だった。

農民の繰り返される生涯に対する達観、言語は川のせせらぎと水面に映る風景…自然と素朴な生の美しさの切り取り方は、ロシア的だなと率直に思った
(ジョージア🇬🇪製作だから怒られそうだけど)
白

白の感想・評価

4.0
寓話的DIY讃歌
世界は互いに閉じたままで、未だに出会うことがない
生の活力は逞しく、漲り、健気に人を思い遣るその心は悠々と流れる川の畔で銃声を静かに見守る
静謐ながらも美しく在り在りと映し出される圧倒的な生のエネルギーに感無量
うめ

うめの感想・評価

4.1
ジョージアとアブハジアの国境近くの川に出来た中洲。
冬に備え、そこの肥沃な土にとうもろこしを植える老人と少女。
小屋を建て
土を耕し
川で魚を獲り
収穫する
そんな自然と共に生きる生活。
人は、大地に自然に生かされているのだ。
それを思い知らされる。

若干の不自然さも漂うが、最小限まで削られた言葉。
確かに、言葉がなくても気持ちは伝わるんですよね。
その分、観る私達の耳に語りかけてくる様々な音。
風に揺れるとうもろこし。
川のせせらぎ。
爆ぜる火の音。
静かに心に沁み込んでくる。
世界はこんなにも美しい。

しかし、それを切り裂く音。
モーターボートのエンジン音。
轟く銃声。
今、自分が何処にいるのか。
人間の愚かさが忘れさせてくれない。


黙々と働く老人。
孫娘の事以外に彼の心に波が立つ事はない。
逆に、大きな波の前触れを感じさせる少女。
女性への変化の前の、透明感と神秘性。
それと、少しの危うさ。
二人の対比が効いている。


争いの醜さを突きつけるという分かりやすい反戦のメッセージではない。
ただ、人らしい生き方とは何なのか?
それを言葉ではなく、映像で伝えてくるような作品でした。
戦時下の無辜の生活者の日常をリアリズムで捉えた社会派というような趣きにみえる映画に一見不釣り合いのようにさえ感じられる少女への視線は一種の戦争映画でもある本作において「生への希求」の象徴とは言えないでしょうか。実際、少しアンバランスなくらいに見えたこうした描写によって、少女や老人そしてジョージアの負傷兵やアブハジア兵たちがより私たちの「隣人」としてそこに生きているように感じられます。あるいは監督や作り手たちのもっと別の思惑や映画史的な背景があることも否定はできませんが。
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