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ヒロシマナガサキのundoのレビュー・感想・評価

ヒロシマナガサキ(2007年製作の映画)
4.0
見よ、滅びの火柱に焼かれた記憶を。

※このレビューには残酷な描写の記述があります。

第二次大戦中、広島と長崎に投下された原子爆弾にまつわるドキュメンタリー。
監督は、アカデミー短編ドキュメンタリー賞を受賞したこともある、日系三世のスティーヴン・オカザキ。

子供の頃から、さまざまな形で目にし耳にしてきた戦争の歴史。
その中でも、特に強く心に刻まれている原子爆弾という恐怖。
「いしぶみ」を観る前に、その記憶を揺り覚ましてみよう。簡単に忘れてはいけない、その記憶を。

被爆者の方や、エノラ・ゲイの搭乗者たちなどへのインタビューを中心とした構成。
その中には、在校生620人の中、唯ひとり生き残った女性や、「はだしのゲン」の作者、中沢啓治先生の姿も。

当時のニュース映像、戦闘中に撮影された映像などを交えながら、どちらに偏ることもなく、淡々と、しかし生々しく「何が起きたか」が語られる。

降り注ぐ白い光と黒い雨。
巨大な火柱、キノコ雲。
摂氏5000度の焦熱地獄。
黒焦げの子供。
首の無い子をおぶる母親。
阿鼻叫喚の地獄絵図。
これはすべて現実。

地獄というのは、罪により辿り着く場所のはず。
本来、行く必要の無い地獄に迷い込み、亡くなられた方々に、心からの哀悼を。
その中で、生きる勇気を選んだ方たちに心からの尊敬を。

口々に、後悔や自責の念を否定するエノラ・ゲイの搭乗者達。
彼らがやらなければ、他の誰かがやっていた。
彼らは彼らで、十字架を背負っている。


現代においても、終わらない戦火。
思想が違うというだけで、自らがより良い生活を送りたい、というだけで、無差別に同種を焼ける生きものがここにいる。

その生きものは、自らを焼いた者の心中を慮って涙することもできるという。
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