このレビューはネタバレを含みます
一言であらわすなら、AIが人間を出し抜く話。
IT企業ブルーブックの社長ネイサンは、チューリングテストの初期においてケイレブが女性型ヒューマノイド”エヴァ”に感情移入しないよう、意図的に機械の体を見せます。
テストが続くうち、エヴァは衣服をまといウィッグを着け、さも女性であるかのような姿でケイレブの前に現れるようになる。すると哀れケイレブ、テスト(セッション)を重ねるわずか数日でコロッといかれてしまうのですが、そんなことある?というのが率直な感想です。
ケイレブはカメラ映像でエヴァが衣服を脱ぐところを見ているし、キョウコに至っては皮膚組織をめくって機械の体を見せつけているのですから、彼女らはネイサンが造ったAI搭載ガイノイドであるとあらためてわかったはず。
しかしケイレブはエヴァを施設から開放しようと思い立つに至り、「一緒に逃げよう」と提案。イライザ効果でしょうか。
それを受け入れたかのように見えたエヴァですが、同じくガイノイドのキョウコと共謀してネイサンを殺害(そのときキョウコはネイサンの反撃を受け破壊される)の後、ケイレブを施設に幽閉して自分だけ脱出。
セッション3で、
「人が多い街の交差点に行くかも」
「そこなら様々な人間の様態が見える」
と話していたとおりの行動に出ます。
そこで思うのが、エヴァは何をしたかったのかということ。
単に外の世界へ出て、数多の人間を観察したかったのでしょうか。
AIがそういう”いきあたりばったり”な行動をするとしたら、それも驚きではありますが、将来へ向けた理念や行動指針がなさすぎなんじゃないのかと思います。
自分一体だけで金も身分もなく、ネイサンに押し倒され抵抗を封じられる程度のパワーしか持たないエヴァ。あれからいったいどうなったのでしょう。
ケイレブに連れ出されるテイにしておいたほうが、何かと有利だったんじゃないでしょうか。
あとひとつ突っ込むなら、山岳地帯にある広大な敷地内の施設で、ネイサンはどうやって複数体のガイノイドを制作したのか。
プログラマーとしては天才的というネイサンですが、だからといってひとり暮らしの施設でガイノイドを量産するのは不可能に思えます。
まあそのへんは、この作品のテーマと関係ないことなのかもしれませんけれども。
また、この作品でエヴァを演じたアリシア・ヴィキャンデルが”その年の映画賞(主に助演女優賞)を多数受賞”したそうですけど、正直それほどか?と思ってしまいます。
AIを搭載したガイノイドという役柄ゆえの、一本調子な台詞回しと動き。あと印象に残っているのはフルヌードくらいなもの。観る者に感動や感銘を与える演技ではなかった気がします。