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縛り首の縄のbennoのレビュー・感想・評価

縛り首の縄(1958年製作の映画)
4.4
『砂時計』があまりにも素晴らしかったので…ヴォイチェフ・イエジー・ハス監督作品…2作目…彼のデビュー作品です…。


アルコール依存症の男クバ(グスタフ・ ホルベク)…恋人クリスティナと治療のため病院へ行く約束をし…その約束の時間までの彼の1日の行動を追います…。


冒頭から惹きつける映像…暈した被写体の手前にアップの電話機…そして彼は窓の外の時計を見詰めます…。

煩わしいコミュニケーションと孤独に耐えながら待つ時間…それらは彼にとっての強迫観念…電話、そして時計…。

クバの部屋から見える壁に描かれたこちらをじっと見つめるようなアールデコの女性画…鏡などの小道具も巧みに使いネオレアリズモに影響を受けた描写…。

一方、退廃的な室内装飾、ジャコメッティのようなアートワーク…クバの部屋は何処となく現実離れした世界…彼のモノローグもとても詩情的…まるでアルコールによる幻影の中を彷徨っているよう…。


そして鳴り止まない電話に堪らず部屋を飛び出すクバ…。

カフェでは偶然出逢った元恋人にイラつき、路上ではつまらない喧嘩をして警察へ…そして流れ着いたのは結局…バーでした…。


  〜〜〜⚠︎以下ネタバレ含みます⚠︎〜〜〜








ウォッカを一口…不思議と震える手も苛立ちも収まるのです…。

バーにいたハーモニストは彼に言います…

  『人生ほど悪い夢はない…酒を飲め…
        みんな消えてしまうぞ…。』

クバの気持ちを和らげるのは…パラドックス的に何あろう…やはりアルコールなのです…。

これが依存症の恐ろしさ…。

そしてバーでクバの分身とも言えるような、同じく依存症のヴワデクという男と出逢います…彼の主役を喰ったような演技も見どころ…。

  『ひとたび飲んだら止まらないんだ…
ゲームに終わりなんてないんだよ…。』

病院、医者、薬…そして思いやりのある恋人でさえ役に立たない…それらは苦しみを加算するだけ…彼はクバの最後の希望さえも踏み躙るかのように吐き捨てます…。

絶望に打ち拉がれ酔い潰れるクバ…

そして彼女との約束の時間…

コミュニケーションのラインをシャットダウンした彼は……??



タイトル、ジャケ写は如何なものか?? …とは思いますが…そこじゃない!! …ラストを含め依存症の恐怖が見事に描かれた世界観に天晴れ!!
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