月うさぎ

デヴィッド・ボウイ・イズの月うさぎのレビュー・感想・評価

デヴィッド・ボウイ・イズ(2013年製作の映画)
4.0
デヴィッド・ボウイの名はあまりにも有名だ。
日本を愛していたボウイは息子を連れて何度も日本に遊びに来ていたし、日本映画にも出演した。
しかし日本においての彼はその「戦メリ」か「レッツ・ダンス」のイメージが中心になっていて、本当の彼の偉大さを知る人は非常に少ない。
いやいやいや、私はファンだ。というあなた。
私だってファンだから、そういいたくなる気持ちはわかる。
でも「世界のボウイ」の存在のデカサは日本にいたらわからない。
絶対に絶対にわからない。

この映画には、実際にはボウイは「出演」してはいない。
過去の映像や写真などはたくさん流れるけれど。
というのも、これは2013年3月から約5ヶ月にわたってロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 (V&A)博物館で開催された「デヴィッド・ボウイ回顧展」を映像化したドキュメンタリー映画だからだ。

『David Bowie is』
50年間に渡る創作活動を振り返る大回顧展ということで、彼の人生をほぼ網羅した展覧会は歴史的な大ヒットになった。なんてったってミュージアムに入るための予約チケットが取れないという騒ぎだったんだから。海外からもこの展覧会を観るために旅行者がロンドンに殺到した。
この展覧会は、あまりの評判のため、全世界を廻ることとなる。
カナダ、ブラジル、ドイツ、アメリカ、フランス、オーストラリア、オランダを巡回して日本にもついにやってきた。
アジア唯一となる日本での開催会場は東京・天王洲の寺田倉庫G1ビル、期間は、存命であれば70歳の誕生日となる2017年1月8日(日)から4月9日(日)までの約3か月間の予定だった。残念ながら日本では『David Bowie was』になってしまったけれど。私?もちろん、行ってきましたとも

ワールドワイドな人気というよりも、尊敬、崇拝の位置に彼は登っている。ミュージシャンに影響を与え、世界のアートに影響を与えたその業績と存在感は他を寄せ付けない。しかも、この展覧会の時にはもちろん、亡くなる寸前まで現役のミュージシャンだったのだ、いや、自身の死までをアートにしてしまう人だった。すごいとしか言いようがない。
2000年、雑誌『NME』がミュージシャンを対象に行ったアンケートで「20世紀で最も影響力のあるアーティスト」に選ばれた。
「エスクァイア誌の選ぶ歴史上最も洗練された10人のミュージシャン」において第1位
「ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」において第23位
ロンドンオリンピックだって開会式で英国選手団が入場する時の曲はボウイのヒーローズだった。
(いろいろなスポーツ中継の時にもよく流されている曲だ)

果たして日本で同じ調査をしたらどうなるだろう?
彼を選ぶ人なら全て、彼がNo.1だと言うだろう。しかし絶対数としては…?

第一、この映画の上映が単館でなおかつ1日1回の夜の回だけというのが信じられない扱いの低さではないか!
(渋谷では満席でしたけどね。池袋では結構ガラガラでしたよ)

この映画は展覧会に行けなかった人のために。行った人の思い出のために。これから行く人のために。
ボウイのファンといいながら、実はあまり知らないという人にもぜひ。
展覧会の展示内容だけではなくその場にいた英国の人々の熱気がびんびん伝わってくるのだから。この空気は日本で同展が開かれたとしても味わえるものではないと思う。
今、『David Bowie is』はスマホのアプリにもなっている。有料だが、評判は非常に良いと聞く。

展覧会の会場になっているヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)がまたすごい素敵な建物なのだ。ここで開催されたというセンスも素敵だ。
イギリスって国はこと文学と演劇と音楽については実に懐が深い。羨ましい。
本作はドキュメンタリーのリアルさが存分に生きている映画にしあがっている。
でも、生のボウイを堪能する映画ではない。エンタメではない。くれぐれも肝に銘じてください。
月うさぎ

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