MasaichiYaguchi

エイプリルフールズのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

エイプリルフールズ(2015年製作の映画)
3.5
嘘にも色々ある。
人から金品を騙し取る詐欺の嘘、我欲や虚栄心からつく嘘、自己保身の為につく嘘、これら悪質なものばかりだけでなく、「嘘も方便」と言われるような優しい嘘、人を傷付けない、人を救う為につく嘘もある。
年に一度嘘をついても許される4月1日の東京を舞台に、戸田恵梨香さんや松坂桃李さんをはじめとした総勢27名の豪華キャストによるコメディ群像劇が繰り広げられる。
この27人の殆どは何かしら偽っている灰汁の強い人物たち。
小ネタもあるが、彼らによる七つの嘘のエピソードが同時進行して物語を引っ張っていく。
一見ばらばらなエピソードだが、終盤に向かうにつれて意外なところでリンクしていく。
七つのエピソードで柱となっているのは、イタリアンレストランで繰り広げられる籠城騒動、ロイヤル夫妻の休日、女子小学生誘拐の三つ、これらに他のエピソードが絡んでいく。
嘘に嘘が重なり、何が真実で何が嘘なのか分からなくなるなか、最後に行き着いた嘘から出たまこと。
その真実が浮かび上がった時、群像コメディに滲む温もりや優しさ、そして胸を熱くする感動が我々を包む。
あるSF映画のパロディで幕を開ける本作は、終わりも対を成すようなシーンで笑ってしまう。
思えば映画も素敵な嘘で出来ているものと言えるかもしれない。