砂

神々のたそがれの砂のレビュー・感想・評価

神々のたそがれ(2013年製作の映画)
3.0
地球から800年ほど文明が遅れたとある惑星に地球から派遣された学者たちが目撃する暴政と虐殺の連鎖を映し出す、アレクセイ・ゲルマン監督の遺作であるSF作品。
SF映画となってはいるが、舞台はほぼ中世ヨーロッパを再現したものであり、進歩ではなく退歩を続ける世界である。
ゲルマン監督の作品は「フルスタリョフ、車を!」は観ていたし、本作は多方でけっこう色々な話を聞いていたが、想像以上であった。

ストーリーについては公式サイトの「物語」を鑑賞後に確認しなくては理解できなかったほど複雑。
プロット自体が複雑なわけではないのだが、モノクロでドキュメンタリーのような構図(登場人物たちがカメラに語りかけることも)、一見脈絡のない連続、なにより臭気すら漂ってきそうなほど汚らしく下劣な登場人物たちの生活が3時間もの尺のほとんどを占め、これらが絡み合うというよりは一体となって視聴者に襲いかかるため、非常に混乱し滅入ってしまう。「神様はつらい」を観客も体験する。

進歩や知性に対する反動の極みのような”知識人が狩られている”という舞台、映像から臭い経つような不潔な衣服をまとった下劣で動物のような登場人物たち(動物もそれらに放し飼い)、泥、糞、唾、辛気臭い雨、食べかけの食べ物、などなど汚いもののオンパレードがとにかく情報量の多いショットで延々映し出されて中々しんどいが、モノクロで撮られていることでそこまでの映像的な負荷はなかった。
それどころか霧、影、光、雪などは絵画的な美しさがあり目を奪われた。
ただ本当にストーリー自体を追うことができなかった…

映画の訴えかけるもの、意図なども考えたが、けっこうタフな映画鑑賞でありかなりの気力を要した。たぶんもっと上手に観るにはまだ早かった。
もう少し時間をおいて、準備してから挑戦すればよかった。
充分な評価をするためには、軽い気持ちで観られる作品ではない。
砂