ガラムマサラ

ブラックパンサーのガラムマサラのレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
3.7
マーベル初の黒人ヒーローによる単独映画。

シビル・ウォーで鮮烈なデビューを飾った黒人ヒーローブラックパンサー。そのしなやかかつ力強いアクションと、陛下の人間性によって多くのファンを獲得したことでしょう。かく言う自分もそうです。
そんな彼の単独映画をどれほど待ち望んだことか!多くのファンがそうでしょう。かく言う自分もそうです。

欧米で公開されてからもうワクワクでしたね。何せ映画批評サイト『Rotten Tomatoes』での批評家たちからのスコアが97%と高いこと高いこと。反面、一般人の観客たちによる評価は71%と少し落ちていますが、これに関しては鑑賞していてなんとなくその理由もわかった気もしますので後述します。


シビル・ウォーでも断片的に語られましたが、ブラックパンサーはワカンダの国王が代々襲名してきた国の守り神であるヒーローです。今作では、そのワカンダでの活躍が主になりますが…………ええ、驚いたのはそのワカンダ。

いや、知っていましたよ?知識として優れた科学技術を持った超文明国家ってことくらい。
でもそれが最新CGと組み合わさってああなるとは!予想より凄かった!下手なSF作品より全然SFしてましたね。

面白いのはアフリカ的な側面もちゃんとあるところ。
他国へのカモフラージュという意味合いも含まれているでしょうが、それを抜きにしても独自の伝統を持った、アフリカの自然に寄り添った文化も併せ持っている点ですね。
民族的な衣装から広大な自然、市内における人々の雰囲気は超文明国家というより牧歌的な印象すら抱きます。相反する印象が融和しているのはなんとも不思議。


そんな超国家でのブラックパンサーのストーリー。
一言で言い表すのならば『ブラックパンサーの国王としてのオリジン』といったところですかね。

シビル・ウォーではヒーローとしてのオリジンを描いていました。ヒーローの自覚と責任を復讐の連鎖から学んだ男が、「さて今作ではどうだ?」といったところでの国を背負う責任のストーリー。国王とヒーローという二面性を持ったブラックパンサーならではですね。

その国を背負うという責任からか、ストーリーはシリアスで、アメリカの社会問題にも切り込む重厚なドラマ。エンターテイメントに寄っている最近のマーベル作品とは少し毛色が違うものです。


メイン・ヴィランはキルモンガー。
ネタバレになるので深くは語りませんが、ある意味で主人公ティ・チャラのもう一つの未来ともいえる存在です。彼を見ていて、シビル・ウォーでのティ・チャラを思い出しました…………そして普通にカッコよかった。

まあ、カッコいいのはブラックパンサーも同じなのですが。
新スーツも機能とビジュアルの融合が素晴らしくて「マーベルやっぱ映画作るの上手いわ」と一人頷き思ったほど。

ただまあ、残念なのはアクションが物足りないところ。
いやカッコいいんですけども、新スーツの機能お披露目な側面があるのと、キャプテンアメリカシリーズで完成度の高い生身アクションを見ているのもあって、アクションが物足りない…………いや贅沢な話ですが。

加えて、今ままでのマーベルにあった、ちょっとクスッとくるような緩いシーンは抑え目です。皆無ではないですけど。シリアスな空気を壊さない程度にある感じですね。

そういった点が、今までのマーベル作品と似たような感じを期待していた観客が多くいたのかなぁと、個人的に考えています。それが上記のRotten Tomatoesでの評価になっているのでは、と。

とはいえ、評価の通り面白くないわけではないですからね!
アクション映画、というよりは『ウォッチメン』とか、『バットマンシリーズ』を見る感じで見るといいかも?
…………あそこまでダークじゃありませんけどね!