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キャプテン・マーベルのnetfilmsのレビュー・感想・評価

キャプテン・マーベル(2019年製作の映画)
3.9
 女は今日も悪夢で目覚める。その夢はとても断片的で、夢の中には彼女が出て来るが、はっきりとしたことは思い出せない。夢の中で彼女は口から青い血を吐いていた。クリー人のエリート特殊部隊"スターフォース"に所属するヴァース(ブリー・ラーソン)は、混濁した不安の解決をメンターに求める。師匠で"スターフォース"のリーダーでもあるヨン・ロッグ(ジュード・ロウ)に教えを乞う。漂流者たる主人公は、ひたすらミッションの中に生きる実直な姿が魅力だが、驚異的な変身能力を持つスクラルの罠に絡め取られる。当初は銀河系宇宙の覇権争いのようにも見えた曖昧な展開だったが、彼女がレンタル・ビデオ店ブロック・バスターに落下したところから、物語は俄然面白くなり始める。時は1990年代、C-53こと「地球」では、異星人の襲来を『S.H.I.E.L.D.』エージェントのニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)と新人エージェントのフィル・コールソン(クラーク・グレッグ)が彼女の様子を見に来る。今から25年前、まだ髪が黒々としたフューリーは、左目にアイ・パッチをしていない。久々に登場したフィル・コールソンの姿が嬉しい。

 既に『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 でその存在を匂わされていたキャプテン・マーベルは、MCU史上、単独で初めての女性ヒロインであり、初めての女性監督の作品でもある。グランジ・ファッション、ナイン・インチ・ネイルズのチビT、しばしば断線するISDN回線。出自をはじめとした一切の記憶を奪われたヒロインは、90年代の音楽やファッション、インターネットを尋ね歩く。やがてルイジアナに到着した彼女たちは、ローソン博士を知るマリア・ランボー(ラシャーナ・リンチ)と接触する。ニック・フューリー〜マリア・ランボー〜モニカ・ランボー(アキラ・アクバル)へと連なる白人×黒人のコンビは、90年代のバディ・ムービーのようで心地良い。ヴァースの自分探しの旅が完了した時、彼女はあっと驚くような素晴らしい力を手にする。バイナリー・パワーにガントレット、大気圏を自在に行き来するヘルメット。「より高く、より遠く、より速く」を信条とするスーパー・ヒロインは、フューリー以外の誰とも交わらずに、超然的な力を手にする。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『アベンジャーズ/エンドゲーム』の間に位置するあまりにも示唆的な序章である。
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