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ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.8
 世界中を旅する英国青年はいま夢と自由の街ニューヨークに降り立つ。魔法動物学者ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)の目に映る1920年代中盤のこの街は大きな希望を叶える街でありながら、同時に多くの不安も抱えていた。『ハリー・ポッター』シリーズの後半4作の監督を務めたデヴィッド・イェーツが新たに手掛けるのは、ハリーたちが使っていた教科書『幻の動物とその生息地』の著者となる魔法動物学者ニュート・スキャマンダーを主人公に贈る新シリーズである。さながら世界を股に掛けるインディアナ・ジョーンズ並みの冒険家精神を宿すエディ・レッドメインは好奇心に溢れた若き野心家の青年である。その瞳は新天地に大きな使命を持って降り立つのだが、ニュートの行く手を悪の力が阻むことになる。まず開巻早々にティナ・ゴールドスタイン(キャサリン・ウォーターストン)やジェイコブ・コワルスキー(ダン・フォグラー)と言った主要キャストが青年の前にすぐに結集する。禁酒法時代のニューヨークでは魔法使いや魔女の根絶を掲げる過激団体「新セーレム救世軍」の代表を務めるノー・マジのリーダーであるメアリー・ルー・ベアボーン(サマンサ・モートン)が彼らの権利を奪おうと目論むのだ。

 子供たちが大活躍した『ハリー・ポッター』シリーズとは打って変わり、今作では大人たちが魔法の冒険活劇を繰り広げる。ニューヨークに来た心優しき青年はおっちょこちょいで、人間とトランク・ケースを取り違えたことから、彼が大事にしまっておいた世界各地の魔法動物たちが大都会ニューヨークに逃げ出してしまう。古くはキングコングからマシュマロマン、グレムリンまでが大暴れしたニューヨークの街は魔法動物たちにとっては遠足のような楽しさだが、当のニュートにとっては気が気ではない。おまけに彼にずっと付いて行くコワルスキーは少し冴えないおデブちゃんで、生身の人間なのに魔法使いの世界の話に巻き込まれる始末だ。いつかニューヨークの一等地で小さなパン屋を開くことを夢見る冴えないおっさんに現実は厳しく、資金繰りもままならないのだが、失意の彼の前に運命の女クイニー・ゴールドスタイン(アリソン・スドル)が現れる。その大きな瞳で世界を見つめるエディ・レッドメインの太陽のような底抜けな明るさを主軸にしながらも、コメディ・リリーフを担ったダン・フォグラーが主役を食う勢いで素晴らしい。ニュートの陽の魅力に拮抗するようなクリーデンス・ベアボーン(エズラ・ミラー)の影を背負いし演技も素晴らしく、新シリーズのスタートとしてはこれ以上ない船出となった。
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