きゅうげん

ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密のきゅうげんのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

『ファンタビ』第三弾はオトナな政治闘争!
青春ジュブナイルな『ハリポタ』と異なり、学者・役人・政治家がメインの『ファンタビ』はその洒脱さが独自の魅力で、三作目にして最大限に活かされた印象です。
とくにドイツ魔法省とグリンデルバルドの選挙をめぐる機微は、二次大戦前夜のヴァイマル共和政末期におけるヒンデンブルクとヒトラーが重なり、とても意味深長。

……がしかし、『ファンタビ』シリーズ最大の欠点「脚本のぼんやりさ」もまた、本作でおし広げられた感じです。
「未来予知できる敵にはノープラン」ってアイデアとして悪手だし、グリンデルバルドが未来予知を活かしてる場面もあんまないし。ダンブルドアの「作戦通りにいかないのが作戦通り」なんて言い訳がましい。
バラバラにあっちこっち右往左往な展開や、クイニーとかユスフとかのキャラクター描写など、「あの静山社のデカい本で読んだらしっくりきそうだなぁ」と、良くも悪くもローリングらしい小説的なテンポ感が勝ちすぎ。
(例:ドイツでのパーティで、ジェイコブは眼前を行くクイニーに対して三度も席を立ちます。これは長編小説のスピード感であって、映像化する際にはその描写の意味をシンプルに四捨五入した演出がなされるべきで、要はまどろっこしすぎ!
……そんなシーンが多すぎる)
オリジネーターとしてのローリングを尊重しなきゃならないのはもちろん承知だけど、もっと映画脚本らしい共同執筆・グループ合作とかを試みては?

そんな間延びした進行は間延びした演技へ。
ウィザーディング・ワールド作品では膨大な量の人間が登場しますが、メインからモブまでイェーツ監督はどのくらい演出に気を配ってるのか。
本作は選挙戦を描くこともあって群衆シーンが頻出しますが、『ハリポタ』で子供がワイワイやってたのと打って変わってすごく雑。戦闘中のスローモーション決め画で、背景になってる人が無表情&棒立ちってどうなの?

なにより残念なのがクリーデンス。
彼は単に捨てられた家なき子でなく、その後現在にいたるまで人間や魔法使いとの関係、あるいはグリンデルバルドとの関係などについて、愛憎半ばどころではない非常に複雑な葛藤を抱えたキャラクターなのに、彼の問題が「寂しさ」に矮小化されてしまったのはガッカリです。

まぁ、麒麟がバンビっぽくてかわいいし、ジュード・ロウとマッツ・ミケルセンがセクシーだし、それで満足っちゃあ満足なんですけどもね!