道人

スーサイド・スクワッドの道人のレビュー・感想・評価

スーサイド・スクワッド(2016年製作の映画)
2.9
【2016.09.12 劇場観賞 2D字幕版 (字幕:アンゼたかしさん)】

 散弾銃みたいな映画でした。跳んで行く先がバラバラな弾みたいにスーリーは散漫な感じなんだけれど、マズルフラッシュの閃きのように、一瞬一瞬「ハッ」とさせられるカットが。
 ムーン博士が要人の居並ぶ会議室でエンチャントレスに「切り替わる」時の、スッと掌の下から黒い影がそっと指の間に静かに優しく滑り込む…闇と手を重ねる「恋人つなぎ」なカットの悪夢的な美しさとか。
 …蓮コラソルジャーズは本当の意味で悪夢でしたが…。エンチャントレス、己は美しいのに、美的センスは壊滅的だな!

 読売夕刊の小梶勝男さんの映画評「半端なストーリーは予告編のよう…でもけなすだけで終わらせたくない実に面白い予告編」というのがまさに鑑賞後の感想。キャラ多すぎで整理しきれてないし深みもない…でもこの悪党達が散弾のようにDCユニバースにばらまかれ、別の映画でどんな「深化」を見せてくれるのかは楽しみになる…そんな「予告編」でした。

 マーゴット・ロビーのハーレイ・クインは(クインゼル博士時代含め)前評判通り素晴らしい。狂ってるけどその狂気を遠くから見つめている己もいる感じの、時々ふっと遠い目をするのがいい。そんな豊かな表情とけしからん肢体(ナイスホットパンツ!ホットパンツを履くために生まれてきてくれたかのような、魅惑のおしり!)に、触れれば自分の手も狂気に蝕まれて腐り落ちそうだけど、手を伸ばしたくなる…。

【以下ネタバレ含みます】

 酒場でのシーン、ハーレイ・クインが悪行に酔っているように見えても実は一番自覚的で、悪名を誇るなら、悪党である業を「背負いなさいよ!」と吐露するように叫ぶシーンが好きなんですが、あるシーンで「悪党」から「外道」に成り下がるような行為を行うキャラがいて、私はそこで一気に冷めてしまいました。我ながらすごい拒否反応。

 悪党には悪党の矜持が…そして汚れた魂の中に恐れることなく手を差し入れて、その芯に触れた人にだけは尽くせる、それが悪党の仲間意識だと思うんですが(ディアブロが「仲間」と認めたのはこの流れだと思う)、そんなところからほど遠い行いをした外道キャラと、それを諦めたように受け入れるとあるキャラに冷めました…。

 まぁ、アマンダ・ウォラーのことなんですけど。己の目的を果たすためには手段を選ばない苛烈さはまだいいとしましょう、目的のためにどんなことをしてでも生き残る「自己保身の塊」みたいな行動もまぁ…よしとしましょう(嫌いだけど)。
 でも、あのビルを脱出するときに、部下達を機密保持のため撃ち殺すシーンが悪党を通り越した外道っぷりで…冷めました。死地に赴いても「イエス、マム」とアマンダの指示に従い、必死に任務を果たしていた部下達(彼女達、犯罪者ではないですよね?)を、機密データを消去という作業をさせた後、最後まで「道具として使い倒して」銃殺処分する外道っぷり。いつも思うんですが、そのハイテクっぷりで記憶の一つくらい消して見せなよ…。

 で、「あんたのボスはギャングかよ」っていうデッドショットの皮肉を「まぁな…そのうち慣れる」みたいに淡々と受け入れるフラッグ大佐にもがっかり…。あなたが「お前ら悪党とは違う…俺はアメリカ合衆国の兵士」だと誇るなら、目の前で無残にも「処分」された「守るべきアメリカ市民」を悼み、また彼らのために怒ってやるべきじゃなかったのかと…。まぁ、恋人を握られている弱みもあるし、任務のためには犠牲もやむなし、っていう軍人思考なのかもしれないけど…。なんかピーチ姫を救いに行くマリオかと思ったら、大佐の方が守られてばっかりの、まんまピーチ姫みたいだったし、なんだか残念でした。

 エンチャントレスは、あの火の粉(燐光?)を常にまとっている感じの、でも常に何かに怯えている目をした、かつて神々しかった存在が零落した雰囲気…第二形態(たくさんの目がギョロギョロしている冠)じゃない方の「灰色の肢体の魔女」のデザインが好きです。弟は最後までどんなやつなのかよくわからなかったけど…。

 カタナはなぁ、回想シーン、相手だけでなく、本人の日本語もちょっと変だったような…。フラッグの護衛に志願した経緯もよく分かりませんが、護衛の割に彼から離れて戦いすぎでは
(デッドショットの方がよく助けてる・笑)。あと、漫画ではよくある「仮面の“目”の部分に下の瞳が見えないからこそカッコイイ」タイプの仮面キャラなので、実写になって演者の「瞳」がぎょろっと見えてしまうと、なんだかちょっと違うなぁ、という感じでした。実写に落とし込むのは難しいデザインなのかも。

(´-`).。oO(予想外に「眼鏡映画」でしたね!白衣を纏った金髪眼鏡美女ドクターというひとつの理想像を体現するかのようなハーリーン・クインゼル博士!あれ、伊達眼鏡じゃないと思うんだけどなぁ。ハーレイ・クインになったあとはコンタクト?ジョーカーの野郎が視力も「矯正」しちゃったのかなぁ。
個人的には目の悪いままの裸眼で、ジョーカーが彩る狂気の世界をぼやけた視界でうっとり見ている感じだといいなぁ。目が悪いからついつい人と話す時に距離が近くなるとか…結果それが艶っぽくなってるとか…)

(´-`).。oO(ジューン・ムーン博士の、凛々しい眉の下のシンプルな眼鏡の組み合わせも素晴らしいよ!もし博士とエンチャントレスが共存できる世界があるのなら、やっぱり眼鏡のオンオフで切り変わり続けて欲しいですね…)

パンフは820円。市川力夫さんという方が頑張っていて、原作での彼らの位置付けとかも分かりやすく、読み応えがあります。
道人

道人