エクストリームマン

心が叫びたがってるんだ。のエクストリームマンのレビュー・感想・評価

心が叫びたがってるんだ。(2015年製作の映画)
2.5
個人的な当たり屋案件。岡田麿里とは徹底的に合わないと予めわかっていたし、もう予告編とか観た段階であーってなってるのに観に行ったから、基本的に観に行った側が悪いのだろうが、金出したし言いたいことは言う。そういうやつ。

勝手にミュージカル映画なのかと思っていたけど全く違った。ミュージカル映画演出を何故か取り入れている場面はあったものの、ミュージカル映画ではない(ミュージカルらしい超現実的な演出はなく、また歌劇パートでのある種の強引な解決や調停もない。歌うところは、それまで散々グダグダやってきたことをもう一度繰り返すだけ)。じゃあなんなのかと言えば、まぁ青春群像劇とかそういうやつなんじゃないの(公式によれば感動青春群像劇……マジかよ)。なんなんだこれ。歌とポスター出た時、『オズの魔法使い』に触るんじゃない!逃げろジュディー・ガーランド!!と映画館で口が叫びだしそうになりました。彼女は魔法の靴を履いているから、踵を打ち合わせて逃げ切ったに違いない……主人公がローソンへワープしたのは魔法の靴的な何かが暗示されてたの?作劇的にあれでいいの?

冒頭からして下品(ラブホを出してるとかそういう意味ではない。岡田麿里は事物の切り取り方に品がないと個人的には感じている。それが「リアル」ってやつなのでしょうか?吉田羊の妙に浮いた生々しい芝居とか、教室のあの空気とかが「リアル」を体現しているのなら、そんなもんクソ食らえだ)で、萎える。まぁ冒頭のアレな事件によって主人公はトラウマを得てめでたく喋れなくなる(喋れない子がミュージカル、っていうところから逆算した感じの設定が辛い。他のキャラクターも大体そんな感じ)。で、ここで生まれた母娘間の不和を如何にして乗り越えるのか、という話なのかと思うと、そうではない。この話の一番根本的な対立は主人公と彼女の母の間にあるものだと思うのだけど、結局最後までそれは解決されない。解決の入り口にすらたどり着かないからなぁ。2時間もあるのに。代わりに何をするのかと言えば、ミュージカルを作って上演する。以上。

個々のキャラクターそれぞれに気になることが山のようにあったけど、まぁ言っても詮無いし映画がウケているみたいだからアレでよかったのだろうという。まぁ、DTM研究会の二人が前に出過ぎ(な割に本編への関わりが特にない)だし、野球部の「問題」のとってつけた感とか、野球部とチア部のモブの恋愛とか、削ればいいような散漫な部分が多いとは思うけど(結局言う)。あのリアリティラインを徹底的におかしくさせる先生とかもいらなかったでしょ。いらないというか、もっと「普通」でよかった。アイツ出てきてあの調子で喋ったら、あーなんとかなるんだなってもうその時点でわかるし。あと、あのチア部設定必要だった?振り付けのため?うーん。主人公の王子サマである坂上の両親の設定もいらないよな。その設定付けるにしても、もう少しボカすとかしないと、あの尺じゃエモーション遮る役目しか果たしてない。1クールのテレビアニメなら8話くらいで出てきてもいいかもしれないけど、そのあとにもうひと山がない状態であれだけ出しても邪魔なだけな気がする。

観終わってみて、1本の映画として明らかに不必要な、同じ場面の繰り返し(一つに纏めて問題ないもの)や本質的に物語に絡まないのに前に出すぎているキャラが何でいるのかを考えた結果、これはテレビアニメ1クールでやるような量の話を、そのまま尺削って作ったのだろうという結論に至った。だから、長尺なのにポンポン話が進んで、根深そうなところもアッサリ解決、野球よりミュージカルだよね(語弊あり)ということになったのだろう。でも結局肝心(に思えた)ところは何も解決しない。あの母の膝に乗ってたミカンはなんだったんだよ!伏線じゃねーのかよ!!

上手くいってない寓話というか、比喩というか、そういうものを見ると得てして辛くなる。今回の卵も、まぁわからなくはないけど、「スクランブルエッグ」とか何にも掛かってないから、卵が急に言い出した時は何事かと思った。何かに掛けてくれ。結局、『オズの魔法使い』のモチーフも投げっぱなしで使ってないしなー。城も、前半で出したのとは違う角度(比喩)で出すとかすれば面白くなりそうだったのに。

「学生が学校の体育館で上演するミュージカル」の場面の(きっとこの作品に限らず)難しさみたいなものを見た気がする。作品がそもそもミュージカルでなかった以上、下手に超現実的な演出を施すわけにはいかないが、逆に「リアル」で「等身大」な描き方をすると映画のデカい見せ場な筈なのにショボく見えてしまう。それがいい、青春なんだと言われても、本編で映像的に爆発的な盛り上がりを作れるのはあの場面くらいだったので、そこでやらなきゃもうどうしようもないけど、やると作品のトーンが変わってしまうからできない。ジレンマ。

演技に関してはもうなにも言わない。