明石です

可愛い悪魔の明石ですのレビュー・感想・評価

可愛い悪魔(1982年製作の映画)
4.7
8歳の女の子が大人を殺していくという、生まれながらのサイコパスを題材にしたショッキングな火曜サスペンス劇場。80年代にテレビ放映された映画ですが、今だと倫理的にアウト、絶対に放映できない過激なストーリーにとってもワクワクしました。これは傑作。

5歳ではじめて殺人を犯したアリス。それも花嫁さんが着ているウェディングヴェールが欲しいからという動機で。それから思い通りにならないことがあると人を殺すのが癖になったアリス。でも大人たちは8歳の少女が殺人を犯すなんてことが信じられない。そしてまだ幼い彼女は、自分が犯した殺人のヒントをイノセントな顔でペラペラ喋ってしまう。そこがなお恐ろしい。

ボートハウスに油を撒いて窓から花火を投げ込むシーンは1番のお気に入り。首吊り死体の前でくるくる回るシーンもかなり好き。終盤のお化粧したアリスによる怒涛の殺人劇も最高。こういう映画でサイコパスが母親を手にかけるのは初めて見た(サイコパスって肉親は殺さないイメージある)けど、そういうこともあり得るんですかね。。少女アリスが大人の男性に本気で恋する展開はオリジナリティあって好き。これが『エスター』の40年近く前に作られてるとは驚きですね。

ストーリーとしては『悪い種子』を下敷きにしつつ、終盤にちょくちょくオリジナリティを混ぜた感じ。「怖くなんかないわ。だって溺れたのは私じゃないんだから」という少女のセリフや、病的な所有欲が殺人の動機となってるところ、ついでに言えば靴裏で顔面を殴打して橋から突き落とす殺し方も『悪い種子』そのまんまでした。8歳という年齢設定も同じだし、悪い種子の日本版リメイクといって差し支えなさそう。

唯一にして最大の残念ポイントは役者さんの演技。テレビ放映用に作られた映画だからか、役者さんの演技に全然力が入ってない。特にアリス役の子役は、大根どころかカカシ演技。まあ8歳だから仕方ないとはいえ、このレベルでGOサイン出していいの?とは思った。あと今で言う「天才子役」ってほんとうに天才なんだなあとしみじみ思いました。パティ・マコーマックがいかに凄かったかを間接的に思い知らされた笑。

少女の名前が「アリス」なのは、異国情緒を出すことであえてリアリティをなくすためでしょうか。同じ名前の女の子が学校等でいじめられないよう配慮したため?それとも『アリス・スウィート・アリス』のオマージュ?その辺はわかりませんが、アリスっていう名前かなりツボです。可愛い悪魔って感じがして好き。

真面目なサスペンス映画なのだけれど、ところどころ差し込まれる大振りな効果音と、CMの箇所に毎回入ってくるテテテテン、テテテテン、テテーン!にどうしても笑っちゃう。劇中ずっとクラシックとイージーリスニングみたいな音楽が流れてるのはけっこう好み。

いやあ、、良い作品に出会えました。序盤からラストまでずっとワクワクしてた。そして予想を大きく上回る鬱ラストも最高。主人公が精神病院に入ってたことが伏線になってるの良いですねえ。演技力にさえ目をつぶれば、完璧に近い出来のサイコホラーだと思う。
明石です

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