こうみ大夫

エル・トポのこうみ大夫のネタバレレビュー・内容・結末

エル・トポ(1970年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ホドロフスキー自身の神が濃密に表現された映画。最強のガンマン4人は、「神秘」「客観」「芸術」「平和(「虚無」かも知れない)」であろう。神は勝利と共に全ての暴力の掌握が無力であることに気づき、「反省」する(ここが非常に面白い、旧約と新約との連続性を持ちながら、「反省」という神の持つ人性を強調しているところに新しさがある)。そして生まれ変わった神は、初めて社会との出会いを果たす。これこそまさにイエスの目指した「実践」の神学であり、穴を掘ることはまさにその象徴であろう。しかし彼が入って行った社会は「格差」の蔓延るとてつもなくしょうもない場所であった。詩編を人間の空虚な信仰・正義として表現したのは見事。まさにダビデに代表される、神を無視した宗教の有様が集約される。その中で「笑い」「エンターテイメント」という人間の根源性を呼び覚ましながら神は異なる存在同士を互いに出会わせる作業すなわち隣人愛の実践を果たそうとするが、それは人間の愚かさによって台無しになってしまう。黙示録の神の怒り、最後の審判を神のブチギレという人間味あふれる行為で説明するのもまた面白い。何か凄いメッセージを残すというより、映画全体がホドロフスキー自身の神の説明となっていて、これは一つの告白であると感じた。人の告白に僕は評価がつけられない、それこそ神じゃないし。単純に映画が面白かった、それに対しての星5。映画の中でよく分からない箇所は数えたらきりがない程あるけど、それもまたカオス・隙間として大切な役割を担っている。見事。
こうみ大夫

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