らんらん

シチズンフォー スノーデンの暴露のらんらんのレビュー・感想・評価

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ローラ・ポイトラス監督“9.11後のアメリカ3部作”、の3作目。
2013年スノーデン事件の現場ドキュメントです。

第87回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞。
他に受賞40ノミネート35。

先日観た『美と殺戮のすべて』の監督過去作ということで初鑑賞。

(ちなみに『美と殺戮のすべて』は、第79回(2022年)ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞、第95回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネート)


(実際の著名な事件なのでネタバレになるのか分かりませんが、以下ネタバレありです)


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ポイトラス監督は、(おそらく一連のドキュメンタリー作品が理由で)アメリカ入国時に拘束された経験があり、当局の監視リストに入っているとスノーデン氏が言っていました。
そのポイトラス監督にある日「シチズンフォー」を名乗る人物から暗号メールが送られてくる…。

この「シチズンフォー」がエドワード・スノーデン。

いわゆるスノーデン事件_NSA(アメリカ国家安全保障局)によるスパイ行為の告発:秘密裏の大量無差別監視、一般市民及び諸外国の通信データ収集の実態を告発した_が、告発前、告発、告発後、と進行する様子が記録されています。

実際にマスコミに記事を出したのは、ジャーナリスト/作家/弁護士のグレン・グリーンウォルド。
スノーデンが初めに接触を図ったのはグリーンウォルド氏だったそうだけど、忙しさから中々話が進まず、次に白羽の矢が立ったのが、ポイトラス監督だったそう。

盗聴や追跡を恐れながらの進行は緊迫感がある一方、スノーデンはあらゆる可能性を考慮しつつ慎重に計画してきたようで、冷静で落ち着いているように見えました。

ただ一つ心配そうだったのは、同居していた彼女のこと。
計画については彼女の安全を考え知らせておらず、彼女の旅行中に出張と嘘をついて出て来たそうです。
その後は、スノーデンの亡命先のロシアに彼女も移り、結婚して子供も生まれたそうです。ラスト近くには二人で台所に立っている様子も映されていました。

興味深かったのは、テロリストから身を守る為には国家による監視も受け入れる、と考える人が多かったこと。

スノーデンに賛同する人と、スノーデンを裏切り者と見る人の割合がほぼ半々。ただし年代によって割合は少し変わり、若い層の方がスノーデン賛同者が多くなっていました。(アメリカ、当時)

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何故告発を決めたのか。その回答の中で、スノーデンが言った言葉が全てかなと思いました。

「知的探究心、知的自由を守るため」
「自分一人ではなく、皆の問題だったから」
「国家と国民の関係が、支配するものとされるものに変わってしまう。当選者と有権者というだけのものから」
(表現の細部はうろ覚えです)

「支配ー被支配」という構図が出来上がった途端に、被支配者は自律性と主体性を失ってしまう、要求や声は大きくても真の自由、未知の良心が(放棄するまでもなく)見えなくなる。
かと言って支配者が自由かと言うとそうでもない。
管理者は管理に必死になり、被管理者は盲目の衆愚に落ちて、結局は皆で堂々巡りを続ける。
他人や他国との関係も、「支配ー被支配」でしか考えられない。

そんな想像には耐えられない。
無論日本も監視対象、とは言え現時点、肌感覚で支配の恐怖を感じているかと言うと、そうでもないのが正直なところ。これが平和ボケってやつですね。
ただ、甘い言葉による洗脳か、監視社会による全体主義的恐怖政治か、その狭間を漂っている可能性はあるなと思いました。事件から11年経ってはいますが、スノーデンに賛同しますと書いておきたい。
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