Ryoko

シチズンフォー スノーデンの暴露のRyokoのレビュー・感想・評価

4.3
アメリカの国家安全保障局(NSA)をはじめとした情報機関が国民の通信データを傍受するプログラムを開発し、通話記録、メール、交通カード、クレジットカード、ネット検索履歴などの情報を密かに収集していたいう事実。この事実を世界中に知らしめた元CIA職員エドワード・スノーデン。彼から直々にメールを受け取った映画監督ローラ・ポイトラスが撮ったドキュメンタリー映画。
スパイとか国家の陰謀とかそういった類の映画は数多く見てきたけれど、ついに本物を見てしまったという気がする。このドキュメンタリーの醸し出す本物の緊張感は、スノーデン本人の極度な用心深さに因るところが大きい。見た目も話し方も普通のおにいさんなのに、メールは全て暗号、待ち合わせ時にルービックキューブを目印にしたり、ホテルの電話に仕掛けられた盗聴器を気にしたり、窓からの狙撃を気にしたり、パスワードを打つときは顔や手先を見せないよう服で覆ったり、「本物」を感じさせる。そして、彼が語る「奴らの監視体制」はこちらの想像を大きく超える恐ろしさであり周到さ。もう逃げ場なんかないのかなと感じさせる。

ただ、自分が平和ボケしてるのか、危機感を感じるまでの想像力が足りてないのかジレンマを感じるのも事実。確かに、自由に考えたり知的好奇心を満たしたりすることが阻害され、不当な逮捕をされる危険すらあるし、監視なんてとんでもない。しかし一方で、テロを未然に防いだり、危険な人物の行動を察知するためにはある程度の監視は致し方ないという考え方もわからなくもないのだ。(国家権力を増大させるための言い分かもしれないけど)

いずれにしても、見終わった後、国家や大手情報通信会社に対して不信感が募ることは確か。そして自由や民主主義といったようなものは、「存在する」と思い込まされているだけで、実は「トルーマンショー」みたいな監視社会に支配されているだけのかもしれないと感じてしまう。本当はとんでもなく不自由な社会に雁字搦めにされて生きているのかも。
特にアメリカは事実を告発した者を守る法律すら存在してないなんて、民主主義も法律も何の意味があるのだろうかと思ってしまう。

※ オリバー・ストーンの映画「スノーデン」は予告を見る限り、スノーデン自身とその恋人についても詳しく描かれていそう。
スノーデンは、「話の中心を僕自身にされてしまうと、大切なことの焦点がボケる」というようなことを言っていたけど、その辺り、映画は大丈夫かな?
それから、こちらのドキュメントでは彼らの今も伝えられるので、何も知らないまま映画を楽しみたいという方は、映画のほうから先に見たほうが良いかもしれません。
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