ユーライ

シン・ゴジラのユーライのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
5.0
当時から人死にを画で見せたがらない姿勢には不満が残るが、それでも完璧というか成立自体が奇跡みたいな映画。オタクが思い描いた理想のゴジラ映画を形にしてしまっている……が故に五年以上実写による国産を出しにくくなってしまったのも何となく。強迫観念としてあった「ゴジラ=戦争」の図式を、広く人類が残した負の遺産として311の記憶から定義し直していることが正しくリブートになっている。緊急事態における事態の推移をフェチ全開で描いていくことそのものの面白さ。余計な人間ドラマはいらない。大きく分けて二幕で構成され、東京壊滅までの前半は予期しない状況の速さに対して、段取りを優先して常に後手に回らざるを得ない人々をブラックコメディ込みで演出する。視点をお上に絞ったのは新しかった。お堅さを類型化するのではなく、キャラ立てしていくのが絶妙に上手い。そうなると、現場には確実に存在する死を出来るだけ間接的に留めたのは正しい判断とは思う。没になった地下での焼死を直接映してしまうと、コメディを含むバランスが崩壊してしまう。その姿勢はある種題材に対する厳粛さすらある。後半は仕事に取り組む仕事人、プロフェッショナルへの賛辞、ひいては労働の肯定がより前面化してくる。旧劇を作った人とも思えない社会性。興味深いのは、そこまで尽くす理由として必然的に「国」という総体が立ち上がって来ること。地理的に消失するような危機に対して『ファイナルウォーズ』のような荒唐無稽でも無い限り、どうしても右寄りになっていくのは『ガメラ2』と同じ。ゴジラの造形は、使徒のような嫌悪を喚起する要素に加え、イデオンっぽいビームを放つ辺りに異形感の解釈が分かる。初代と同じく表情が不明だが、アップで映ると色々な面が見えてくるのが良い。一番好きなのは、タバ作戦で自衛隊の猛攻をものともせずに黒煙から現れるショット。
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