青いむーみん

シン・ゴジラの青いむーみんのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
4.1
 劇場に行くたび何度も何度も見た予告。ギャレゴジよりも微妙な出で立ちのゴジラ。観るたびに振り返る石原さとみ。荒ぶる長谷川博己。キャスト総勢328人という金の賭け方を間違っているとしか思えない煽り文句。そしてやはり振り返る石原さとみ。とにかく不安だった。しかし、それは今日一掃された。
 ギャレゴジはゴジラのキャラ映画だと思っている。序盤から引っ張りまくったゴジラの顔面をドン!からの見得を切り咆哮する瞬間のカタルシスが最大の魅力だ。その点シンゴジラははっきり言って微妙だ。造形は負けていると言っても仕方ないだろう。だがシンゴジラはゴジラというキャラを特別中心には置いていなくて、不明生物に対して今の日本人がどう立ち向かうのかという点がメインだ。その対抗策を案ずる団体の個々人のパーソナリティが非常に庵野らしい。日本人はやっぱこういうとこで勝負だろと言ってくるよう。
 言葉と文字のブルドーザーが蹂躙するのが今作だ。従来の政治家達の自己保身のみを考えた言葉達がひたすらスピーディーに飛び交い、団体が映されたら団体の名前、場所が変わったら場所の名前が字幕で表示され、憲法の条項までもがスクリーンを占拠するなんて非常に庵野らしい。樋口監督が庵野の設計図どおりに素材を撮り、素材を庵野が好きなように調理した結果、エヴァ実写版に近いと言ってもいいぐらいのできになった模様。エヴァが好きな人には是非観て欲しい。
 個人的に今作の一番のポイントは自分が日本人であるかどうかだと思う。インデペンデンス・デイの大統領の言葉でアメリカ人がイェアー!ってなってるのを第三者として観て冷めていたのが、当事者になったような感覚。突如現れた不明生物との闘いで失われていたアイデンティティを取り戻す。我々日本人はまだまだ捨てたもんじゃないという希望に未来を観る映画になっているので日本人であることでより大きく響くだろう。
 眼を見張るのは映画だけではなくそのスポンサーの数もそうだ。自衛隊の全面協力もあったりして、ものすごい数の人に支えられた今作が凄いのは、普通それだけの人間が関わったら柵ができ、好きにやれないようになるが、それでも庵野は自分の見たい映画を撮ったように見えるところ。どう見ても仕事で撮っただけの熱量のないスポンサーの意向系映画達とは一線を画しているように思う。
 是非とも続きが見たいので皆さん是非見に行ってください。しかし小学生以下ははっきり言って厳しいと思います。膨大な台詞に着いて来るのが大変だと思います。はっきり言って聴き取り辛い役者さんもいますし、言葉も難しかったりするので恐らく理解が追いつきません。その辺をご了承の上ご覧になってください。