青いむーみん

母さんがどんなに僕を嫌いでもの青いむーみんのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

疑似家族という形を提示し家族とはなんぞや?と問われ続けた2018年。人を想う気持ちが、共に過ごす日常が、単なる人の集まりを家族たらしめるのか。それとも血縁がなければいけないのか?
本作は禍々しくも綺羅びやかで夢のような得体の知れない「血縁」が描かれている。そしてこれはまどマギやアニゴジと同じとも言えるのだ。どの主人公も「円環の理」を断つために聖人化する。この物語の主人公たいじの場合は死せずして成し遂げるが、終盤はもう仏のようだった。

これは本当にダメな親のまま終わってしまうのを子供の愛で引き戻した稀有な事案。だが、愛がどれほど素晴らしくても対象者が心の何処にも後ろめたさがなかったらありえなかったこと。あったからこそプライドを打ち崩してくれた子供に対して心の底から感謝の気持ちを持てた。やはり人に想いが通じることは素晴らしい。だからこそ奇跡的で美しい。が、本当にダメな親がいることを忘れてはいけない。死んでもいいような奴らがこの世界には溢れている・・・あ、これは違うやつ。

人を人たらしめているところは結局何かということが詰まっている。『少女邂逅』と同じく、ただ他者に認められること。それだけ。婆ちゃんがギリギリのところでたいじを人として保っていた。友人関係が奇跡的によくて、彼を人間にしてくれた。これが御本人の作品でなければ嘘だろと言いたくなるくらい最高な友人達。たいじには帰る場所ができた。母さんにどれだけ痛めつけられても、もうブタにはならない。この組立が個人的に好きなところ。もし母さんが折れなくてもたいじはもう大丈夫だから。「こんなに嬉しいこと今までなかったから」なんて震える。

キミツくらい人を見る目を持てるというのは必ず何かを経験しているからだと思うんだけど、彼に関しての情報は非常に薄い。カナはもっと薄い。同僚の彼氏大将なんて神の使いか何かかと思うぐらい優しいけれど全く情報がない。恐らくは大げさじゃなく神の使いなんだろう。
一番の気がかりは姉。劇中物凄く薄い存在でどんな思いを持っていたのか全く描かれないし、著者には窺い知れなかったから原作にも描かれていないのだろうか。家族の物語なのに即離婚した父親は別としてこれほど姉が薄いのは驚き。

太賀が凄く良かったのはもう誰もが認めるところ。四人で海行って、浜辺で告白するシーンは上記したけど、もらい泣きする以外の選択肢が用意されてなくて困りました。吉田羊は通常運転だなぁと思ってたら最後の二人並んで座って話すシーン。たいじには見えない方の頬だけを伝う涙に震えた。プライドの高さをギリギリまで表現した素晴らしい演技。ああ、ハナレイ・ベイ鑑逃してしまっているなんて言えやしない・・・