あゆみ

シン・ゴジラのあゆみのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
4.8
人間ドラマ的な部分が『そんなものに一切の尺をとりたくない‼︎』的に排除されてるから、かえって見る側で内心を想像してしまって、ドラマ演出がない割にエモーショナルに感じられる。悪意のない「さっすが米軍だな〜」を聞かされてる時の花森防衛大臣のキツい目とか、避難のヘリを待ちながら米軍の東京爆撃を見てる総理の背中とか、リアリストの権化みたいな赤坂補佐官が核攻撃の可能性を察して見せる動揺とか、最後の最後に「よかった…」って笑う尾頭さんとか、みんな役職としての背景と一言では言えない感情を持って動いてるんだなっていう感じがしてとてもよかった。ひとり残らずみんなよかった。巨対策のはぐれ者たちは最高だった。あとIMAXで聞く國村隼の声が良すぎる事もよかった。役立たずの御用学者(仮名)の真ん中が宮崎駿にしか見えないのは、師匠出したかったん?と思ってちょっと気になる。

全編徹底的にシステムの映画で、一人の英雄的な人物の能力に頼るわけじゃなく、「ここは俺の勘を信じろ!」的な、システムに馴染まない特殊能力が何かを解決する事もないので、手続き手続き話し合い仕事仕事段取り段取りでとても淡々としている。「この国はトップが死んでもすぐに次が出てくる」っていう台詞は象徴的だったけど、トップだけじゃなく、その下の有能な人たちもみんなサブを連れてて組織人としては代替可能なの、『私が死んでも代わりはいるもの』って感じだけど、仕事ってそうじゃないと回らないしなあと思う。描き方が組織>個人で、しかも私的な部分はカットされてるからめちゃくちゃ淡々とはしてるんだけど、現状の組織とかシステムのあり方に文句がない人なんか一人もいないだろうに、みんなその中で自分の責務を必死に果たす様にとても胸を打たれる。パニックの中で交通整理を続ける警察官や、頼れる指示がないなか誘導を続ける消防士や、そういう人が映ると泣きそうになるし、戦後初の自衛隊による武力行使が始まりますっていう中継の後ろをピザ屋のバイクが通ってると、いやお前は早く逃げろよと思う。

2回見たけど、2回目も本当にこれ倒せるのか?と思って最後まで全然気が抜けなかった。ゴジラ自体もとてもよくて、ギョロ目の第二形態が街を壊しまくるところも、第三形態と4機のヘリが対峙するところも、第四形態が上陸してついにゴジラのテーマが流れるところも、闇夜の東京で一歩ずつ辺りを停電させていくところも、在来線爆弾が倒しまくったビルに挟まれるところも、かっこよかったり気持ち悪かったりそれぞれすごくいい。大規模な非日常感が好きなので、コピー機が続々運び込まれる会議室とか、河原に隙間なく配備される戦車とか、360万人が避難する全車線下りになった道路の渋滞とか、ワクワクするところがたくさんあった。だいぶ偏ったつくりの映画だと思うけど、異常なテンポのよさも大胆な編集も変なカメラワークも、みんなで日本に(本当に)起こった大災害に自分の仕事を果たして立ち向かおうなっていうメッセージも、見てよかったなと思う。IMAX効果もあって迫力と絶望がお腹まで響いてすごかった。4DXで見たらびっくりして死ぬかもしれないけど、4DXでまた見たい。
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