あゆみ

オカルトのあゆみのネタバレレビュー・内容・結末

オカルト(2008年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

白石晃士監督もフェイクドキュメンタリーも全く知らず、なんの予備知識もなく見たのですごくドキドキした。いつも映画を見る時の、自分の中の『多分こんな感じ』という無意識の心構えと全然違う物が出てきたので、テイストを掴むまでの最初の何分かがとても怖かった。ホラーの怖さはチープさと密接に関係してるというのがよくわかる。もしかして計算ではないモノが映ってしまっているかもしれない、誰も意図していないコトが本当に起きているのかもしれない、という嫌なドキドキ感が拭えない感じが新鮮だった。突然の大声とか幽霊とかで怖がらせる作りではないけど、娘を亡くした母親が「最近娘が夢に出てきてくれるようになって、口をこんなに開いて笑ってるんです」って言いながら唇を頭くらいまでひっぱりあげるジェスチャーとか、別に怖いものは何ひとつ映ってないシーンで普通にゾッとした。

主演の人が上手すぎて、本当にそういう人にしか見えないのが、余計にありのままおかしな人や現象を映してる感じがして怖い。途中で襲ってくる黄色いタオルのおじさんも、本当にそういうタイプの人に見える。あのおじさんは江野くんの目的も、動機も、行きたい場所も分かっていて、しかもそこがどんな場所か既に知っている辺り、少なくともその違う次元の世界とこの世界にはなんらかの交通があるわけで、それがすごく怖い。「地獄だぞ」という台詞も端的に怖い。地獄への先導者に神託を与える存在も感じられて、その禍々しさが観光地とか普通の駅とかに充満している感じも嫌だった。こんなの絶対嘘なのに…怖いはずないのに…と思いながらも最後までずっとビビりながら見て、見終わってDVDを消してもなぜか地デジを受信せず真っ暗なままになったテレビに、「ポルターガイストや…」ってなって後ろを何度も確認した。勘弁してほしかった。

途中で黒沢清監督が出てきて和む。最後の21年後の居酒屋で、ルイボスハイとかバイオ桃ハイとか、狂牛病で10万人死んでるとか、ちょっとした未来感が細かいのが面白かった。あんなにしょうもなくて腹が立つ男だったはずの江野くんが、使命を前にタカってた100円を返す所はグッときた。
自分の中の『映画ってこういうの』がぐらぐら揺さぶられる映画で面白かった。
あゆみ

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