ちろる

愛の小さな歴史のちろるのレビュー・感想・評価

愛の小さな歴史(2014年製作の映画)
3.5
父を憎み続け女が父と再会する物語と、チンピラの男が妹と暮らし始める物語の2つが並行して描かれる家族の愛の物語。

『雨粒の小さな歴史』とテーマが似ているが、個人的にはこちらのほうが少しホロリときた。

愛と憎しみは紙一重とよく言われるけれど、そもそもその事で言われる『憎しみ』は、嫌いなのではなく、自分に愛情が向いてくれない苛立ちなのだろう。
自分たちではなし得なかった、当たり前の家族の幸せを父の残りわずかな人生で取り戻そうとする夏希。
しかし、やはり幼い頃の辛い思い出がフラッシュバックして、弱った父に罵声を浴びせてしまう。
中村映里子さんのクセのある演技は人によって好き嫌いがあるのかと思うけど、この作品においては光石さんとの組み合わせで、なかなかの重みのあるものへと仕上がっていた。

演出はたしかにインディーズ色は抜けきれないのだけど、不幸の連鎖ではなく、幸福へのつながっていくような希望のあるラストの描き方は中川龍太郎監督ならではの優しさに満ちている。

後悔は悲しみでは終わらない。
その後悔の気持ちを糧に未来につながれば、その公開した過去も少しだけ輝けるのだからね。
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