es

ハイヒールの男のesのネタバレレビュー・内容・結末

ハイヒールの男(2014年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

韓国には儒教とキリスト教というLGBTQ+には生き辛い背景がある。加えて徴兵制度もある為、トランスジェンダーである主人公が決心するまでの道のりを考えると最後の決断が重くのしかかってくる。
更に主人公の場合は、自分が自己否定も含めた存在否定をしたが故にゲイの友人が自殺してしまったという過去もあり、親友の死と共に自分の中の女性の心を殺して生きてきた。鍛え上げられた体と身体中に残る傷跡が男の美学ではなく女の死を表すものとなっているのが印象的だった。

任侠映画や昔の刑事物のような男性のみの世界で繰り広げられる物語の中にある恋愛とは違った同性同士の愛をトランスジェンダーの物語に組み込んでくる辺りも凄いが、エンタメに走り過ぎずそれぞれに対して最後まで真剣に向かい合っている所が凄いと思った。
恐らくこれを日本でやろうとすると、コメディ要素を強めて中途半端な作品になってしまうと思う。

ラストシーンは良かったと思う。
女として生きることへの諦めのようにも見える無言の見つめ合いの後のチャンミとの車のシーン。
ホルモン注射を打つ事をやめ無精髭を生やした主人公が好きでもないタバコを吸って「男らしさ」を演出しようとするのを、チャンミが止めてタバコの代わりにジュースを渡す。受け取った主人公が男らしさを装うのをやめて小指を立てて飲む。
手術をする事は叶わなかったけれど、自分の心を殺さずに生きていける世界を手に入れたのだと分かる結末だった。
es

es