Donatello

ボーダーラインのDonatelloのレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
4.6
全編に漂う緊張感。ホラー映画のようなBGM。不気味な間。意図的にフレームを外し観客の想像力に訴求するそのカット割り。
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の演出する独特な雰囲気が、『プリズナーズ』と『複製された男』とでは異なる意味持つものだっただけに、今作どんなんだろうと思っていたのですがね。

エミリー・ブラントちゃんが大活躍する麻薬捜査モノかと思ったら、予想以上にデル・トロさんの圧倒的存在感でお送りする恐ろしい映画でしたよええ。

メキシコの麻薬カルテル撲滅という大義のもと、国境は「戦場」なのか「捜査現場」なのかという善悪の狭間で揺れる女性捜査官…とかいう面倒くさい話はこの際どうでも良くてデル・トロさんです。

エミリーちゃんが特別捜査チームに召集されるとそこには静かに佇むデル・トロさんの姿が。
エミリーちゃん達が国境線において、不穏な空気で銃撃戦になるとそこには活躍するデル・トロさんが。
連行された麻薬組織の人間を取調べという名の拷問にかけるのは勿論デル・トロさん。
エミリーちゃんがピンチになるとデル・トロさんがっ!
あとデル・トロさん。
最後の最後までデル・トロさん。

主演ベニチオ・デル・トロ映画じゃねーか。

国境警備隊に、デルタフォース、そしてエミリーちゃん達FBIを伴わないと立場が曖昧になるジョシュ・ブローリンさん演じるCIA。更にコロンビア人傭兵デル・トロさん。
混成の特別チームだけに、味方の筈なのに動きが読めないという不安。
観ているこっちも次の展開が分からない。
こういう映画久しぶり。

撮影監督が『ノーカントリー』や『プリズナーズ』のロジャー・ディーキンズさんなので、不安感をしつこい程煽ってくるカメラワークはもう抜群。

米iTunesサイトの予告ページのジャンル区分は「スリラー」。
こんなドンパチものの何処がスリラーなのかと思っていたけれど、それすら今考えれば納得の一本でございますお客様。
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