YasujiOshiba

ボーダーラインのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
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備忘のために

- 冒頭で「シカリオ」(Sicario)の説明がある。エルサレムの「熱心党」から来ているという。祖国に侵略してきたローマ人たちを狩っていった暗殺者だという。
 調べてみると、たしかにシカリ派(sicarii)という一派がいたらしい。彼らは熱狂的な愛国者で、ユダヤ王国の復活と民族の独立をめざし、それを阻む者ローマ人や親ローマ帝国のユダヤ人などを組織的に殺していたといのだ。
 殺しに使われたのがシーカ(sica)と呼ばれる湾曲した刀。彼らはこれを常に私服の中に隠し持ち、祭りのときや、人通りの多い公共広場などで殺害を結構。相手が倒れると群衆に紛れて逃げ去ったという。
 このシーカ刀は古代ローマにおいて、あのスパルタカスで知られるトラキア剣闘士が用いたものでもある。

- この映画で、そのスパルタクスのように力強く、シカリ派のように狂信的な人物にリアリティをもたせたのがベニーチェ・デル・トロ。圧倒的な名演だ。

- 狼たちの世界へ案内役はエミリー・ブラント。彼女の演技、ぼくは『ルーパー』で見ているはず。レインメーカーになる可能性のあるシドの母親サラを演じたのが彼女だったはず。どちらのブラントも、ぼくらを日常世界につなぎとめながら、異世界と誘い込む役所。
 そういえば『オール・ユー・ニード・イズ・キル』も彼女だったっけ。だんだん思い出して来た。でも、見た中ではこの作品の彼女が一番。

- ドゥニ・ヴィルヌーヴ作品は初めて見たけど、カメラと音響がすごくよい。せりあがってくる重低音。メキシコ家庭の暖かい光のなかに舞うチリ。俯瞰される国境。ナイトヴィジョン。はっとするような夕焼け。サッカーに興じる子供たち。花火のような銃声。火柱。沈黙。

- 次は『メッセージ』を観るかな。『ブレード・ランナー2045』の予習が、こんなにドキドキするものになるとは、うれしい誤算だわ。
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