明石です

アサシン クリードの明石ですのレビュー・感想・評価

アサシン クリード(2016年製作の映画)
3.2
中世末期、宗教裁判が全盛のスペインを舞台に、暗殺者に仕立て上げられた元死刑囚の男が暗躍する。アサシンクリードというと、中学生の頃に友人と一緒にプレイして以来、世界観の素晴らしさに魅せられ大人になっても何度か手に取った(残念ながら飽き性の私にはいずれもクリアできず笑)そこそこ思い出のある作品なので、楽しみに鑑賞。何ともいえない出来でした。

まず死刑囚が、刑を執行されたと思いきや薬で眠らされ、謎の施設に移された上で、遺伝子記憶を遡り過去に「退行」し、全てがバーチャルリアリティの世界で起こるというSF設定は、ゲームがオリジナルだから致し方ないとしても、そこに重点を置くのは違和感が凄い。これだけお金をかけてキャストを揃え、良質なアクションシーンを作っておきながら、現代のテクノロジーの方に物語の力点を置くというのはまったく解せん。なぜアサシンが大活躍する中世を押さないのか。

とてつもなく前評判が悪かったので、よもや原作の熱烈なファンが、原作と比較した上で本作の至らぬ出来にご立腹なのかと思っていたら、これは原作云々以前に、映画ファンも怒る笑。高価な贈り物を見繕った袋のちょっと空いたスペースにトイレットペーパーを入れるようなもの。ゲームを真剣にはプレイしてない私のような(そしておそらくは大多数の)鑑賞者には、この現代と過去を行き来するSF設定自体が不要に思えてならない。無駄どころか、わざわざ作品にマイナスを持ち込んでしまう。技術的にできるからといってやらなくていい、あるいは他人の作品に余計な「意欲」を持ち込んではならない、というのの好例ですかね。

本作のシナリオを書いた人は絶望的にセンスがないのか、各所に挿入され、しかもメインの座に居座ってさえいる現代パートは、中世パートで上がった鑑賞者のボルテージを無闇に冷めさせるだけの蛇足なのだと、どの段階まで気づかずにいたのでしょうか。CGで再現された中世のスペインの街並みを眺めるだけで大満足な私としては、お題目のように挟まる現代パートに興醒めしながら観るほかなかった。ゲームがまたとない名作なので、アサシンクリードの何が受けているかは想像力をたくましくせずとも分かろうはずなのに、あえて逆張りをしたのはなぜか。原作の魅力を汲んでストレートに映画化するだけで絶賛されただろうに。

とはいえ、さすがはアサシンクリード、世界観は素晴らしく良く、アクションシーンも超一級品。ジェレミー·アイアンズにマリオン·コティヤール、マイケル·ファスベンダーと、渋めの俳優さんが揃っていて眼福でもある。映画としての出来がイマイチな映画を観て「キャストが良かった」と言うのは、料理を食べ終えたあとに、お皿が良かった、というくらいには無意味かつ失礼なことなので避けるとしても、良い面はたくさんあった。けどそれは映画についてではなく、すべてアサシンクリードという作品に対する賞賛です。自宅にギリシャ·ローマ編(火の鳥ではない)のPS4版ディスクがあるので、久しぶりにプレイしてみようかな。
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