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ネオン・デーモンのyksijokiのレビュー・感想・評価

ネオン・デーモン(2016年製作の映画)
3.5
美は肥やし。どんどんお食べなさい。

観終わった最初の感想は「グリーンインフェルノと間違えたかな…。」でした。今作も全体的な色味はレフン節がビンビンに出ているし、ストーリーはモデル業界を舞台にしているため複雑ではなく分かりやすい。

ジェシーを演じるエルファニングがとにかく美しく映っている。本人はもちろん綺麗なんだけれどもパキッとしたライティングと美的センスが画面上に広がっていた。目に入るトータルとして観客側も嫉妬したくなるような美しさがあってそこには120分間惹きつけられた。

概念的で寓話的なプロットになっているために疑問ポイントはたくさん出てくる。グロい描写もあるため大衆受けはしないだろうなという感じ。個人としては物語的な面白みに少し欠けていたのと、誰にも感情移入できなくなって以降は展開への興味が薄れてしまったのが残念。

レフン監督作品にありがちな「唐突で生々しい血」は今作も出てくる。血さえも美しさとするような印象があった(ジャケットにも使われているオープニングのシーンしかり)。

意味のわからないもの、何かのメタファーであるんだろうという事象がいくつか出てくる。この辺りを分かりやすく作らないところがこの監督の特徴であり良さだと思う。その中で全体のテーマである”外見的な美しさは本当の美しさなのか、人工的に作り上げた美貌は美しさと言えるのか”という部分はエルファニングの唯一無二の美しさとそれ以外という対比で絶妙に見せている。特にオーディションのシーンでの他の女性達を圧倒するジェシーの存在感には驚いた。

LAが舞台になっているからかジェシーが夜景を見ながら軽く踊るシーンはすごくラ・ラ・ランドに似ているシーンになっていた。この辺りのシーンはすごく好きな感じだった。

美や死をすごく概念的なものとして描いているためか観客としてはすごく感情移入しにくいんだけれども、カットごとの映像としての美しさや相変わらずの赤と青のバッキバキな画というのは今作でもたくさん出てきていて、そこ目当てなところもあるので十分楽しめた。ファンタジックで前衛的で尖ったな音楽も健在でした。
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