イチロヲ

キリマンジャロの雪のイチロヲのレビュー・感想・評価

キリマンジャロの雪(1952年製作の映画)
3.0
旅行先の異国情緒と豪奢な女性遍歴をネタにしながら執筆活動を続けている作家(グレゴリー・ペック)が、キリマンジャロの麓にて致命傷を負ってしまう。アーネスト・ヘミングウェイの自伝的小説を映像化している、ヒューマン・ドラマ。

一箇所でジッとして居られない性格の主人公がヨーロッパ各地を放浪。「現地妻をこしらえる→妻の愛情を度外視してしまう→妻が失脚する→別の場所で現地妻をこしらえる」を繰り返しながら、作家としてのアイデンティティ、ひいては生きる意味を説いていく。

致命傷を負った主人公が憔悴の果てに過去を反芻するという内容なのだが、逼迫した健康状態がまったく伝わらないため、もはや狂言にしか見えない。加えて、各国をスクリーン・プロセス(初期の合成技術)で演出しているため、変な笑いを誘われてしまう。

人並み外れた行動力と野心を兼ね備えている、山師のような男のほうが断然モテるという現実を叩きつけられる作品。これはヤコペッティやジュスト・ジャガンにも、同様に言えること。主人公カップルから戦力外通告を受ける呪術医師に共感を禁じ得ない。
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