Inagaquilala

MERU/メルーのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

MERU/メルー(2014年製作の映画)
4.1
元旦の8時50分からの上映、今年の「初詣」は新宿ピカデリーだ。去年、4月からFilmarksを始めて250本。今年は1月1日から年間観賞365本をめざす。そのスタートにはふさわしい作品となった。

インドのデリーからガンジス河の源流を遡って分け入る、ヒマラヤ山脈メルーの中央峰、通称「シャークスフィン」。高度6500m、まさにサメの背びれのように聳える、難攻不落の「世界一の壁」に挑んだ3人、コンラッド・アンカー、ジミー・チン、レナン・オズタークのドキュメンタリーだ。

監督の1人としても名を連ねる「ナショナル・ジオグラフィック」のカメラマンでもあるジミー・チンと、メンバー中いちばん若いレナン・オズタークが、死と隣り合わせの急峻、極寒の地で撮影した奇跡の映像の数々には、ただただ驚かされるばかりだ。

悪天候に遭遇し崖から吊るしただけのテントの中で3日間を過ごすシーンなど、この挑戦の困難さを見事に映像で語っている。もちろん、これまで何人もの登山家の挑戦を拒んできた未踏の山「メルー」の驚異の映像は、これはもう神々しいばかりだ。

しかし、この作品の優れているのは、単なるクライミングの記録映画ではなく、残り100mの地点で一度は登頂を断念するが、3年後再びこの「シャークフィン」に挑む男たちのバックストーリーまでも的確に追い、心を揺さぶるヒューマンドキュメントにまで昇華させている点だ。

とくに途中でしだいに明らかになっていく、リーダーであるコンラッド・アンカーが抱える友情と家族のドラマには、彼の哲学者のような容貌からは想像できない、別の顔を見て妙に納得したりもした。クライミングの天才レナン・オズタークの瀕死の重傷を負ってからの復帰の物語も、まるでドラマを観ているようだった。

いずれにしろ前人未踏の大自然に、不屈の魂で敢然と立ち向かう3人の物語を観ていると、確かに心を強くするものが湧いてくる。365本のスタートを切る作品としては、実に素晴らしい選択だった。
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