荒野の狼

海難1890の荒野の狼のレビュー・感想・評価

海難1890(2015年製作の映画)
5.0
2015年の日本とトルコの合作映画。1890年に和歌山県串本町紀伊大島で起きたエルトゥールル号遭難事件と、1985年のイラン・イラク戦争勃発時のトルコによる日本人救援機による救出した出来事を描くが、前者が作品のほとんどを占める。約100年の間隔をおいた事件をトルコのケナン・エジェと日本の忽那汐里が一人二役を演じることで、時間を超えた繋がりをみせるが、役者が同じということ以上には無理に関連をつけていない。トルコと日本の先祖と子孫を代表するということで、二人の役者二役で使い、たとえ血縁というものがなくても、現代のトルコ人と日本人は1890年の彼らの子孫であるということに変わりはないというメッセージになったと受け取りたい(役の上で血縁がない二役は、現代と過去の両国の一般人の時代を超えた関係に外挿できる)。
私が二つの事件のことを知ったのは2002年に韓国でトルコ対コスタリカのワールドカップサッカーのゲームを見た時で、それまで関心のなかったトルコという国と日本との意外な繋がりと、そしてたまたまトルコの試合を見る奇遇があり、この事件は深い印象に残った。数年前に、串本をたまたま訪れる機会があり、事件の舞台が近くであることを知り、さらに想いを強くした。この時、トルコのお守りも売っていたのだが、形状が映画で使用されているものとは異なったのが残念。現在、紀伊大島には橋が掛けられ、トルコ記念館、エルトゥールル号遭難慰霊碑のほか、映画のロケ地マップも入手できるので、映画のファンには聖地巡礼が楽しめる。2020年の新型コロナウイルス感染では、多くの国が排他的になってしまっているが、本作は他国との時代を超えた親善が大きな実を結ぶことを伝える重要な作品。
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