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ゴースト・イン・ザ・シェルのatsukiのレビュー・感想・評価

3.7
【心への問い】

士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』を原作に、『スノーホワイト』のルパート・サンダースが監督、『トランスフォーマー』シリーズを手がけ、『トランスフォーマー/リベンジ』ではゴールデンラズベリー最低脚本賞も受賞したアーレン・クルーガーが脚本を務めた。

主役には世界一美しいダミ声のスカーレット・ヨハンソン、脇を固めるのは我らが日本のビートたけし、桃井かおりまで出てます。

ネットに直接アクセスする電脳技術が発達すると共に、人々が自らの身体を義体化することを選ぶようになった近未来。人間の尊厳は失われ、街の人々は抑圧されている。そんな中で脳以外は全て義体化された主人公の少佐率いるエリート捜査組織「公安9課」はサイバー犯罪やテロ行為を取り締まるべく、日夜任務を遂行していた。

ハンカ・ロボティックス社の推し進めるサイバー技術の破壊をもくろんだテロ組織による事件を追う中で、少佐は自分の過去について知る事になる。

自分は一体何者なのか?
自分は一体何をするべきなのか?

苦悩や葛藤しながらも本当の自分を見つけ、殻にこもっていた何かを解放する物語である。

目に映る独特な世界観やド派手なSFアクションなどチカチカするほど目移りするが、根底にあるのは現代への風刺と普遍的なメッセージだと思う。

脳以外は義体化という設定でそこに心はあるのか?という事を突きつけ、人間の尊厳に対して問いただしている様に見えた。確かに脳を全身機械の義体に入れれば、病気もしなければ、歳を取らずに衰えないし、容姿端麗にだってなれる。更に言えば差別や偏見だって無くなる筈だ。

みんな病気しない。
みんな同じ年齢。
みんな美男美女。
みんな同じ肌の色。
みんな同じ言語。

確かに一見素晴らしい世界に見える。

でもそこに人間らしさはあるだろうか?

個性は失われ、同じ色に染まるしか道がなくなる。より良い世界を目指したはずが、人間が手段として扱われてしまっている。

つまり、何か永遠を手にしたいからこそ義体化したのに、義体化したいから人間を使用してしまっている。

実際のところ「目的のための手段」になっているからこそ、犯罪は蔓延っているし、テロも絶えず起こり、国も腐っている。だからこそ義体化された立場の少佐は自分が誰なのか?自分は何をするのか?分からなくなっているのだ。

そんな中で誰かや何かを「信じる」または「想う」事の先にある少佐の言う「私の正義」こそ、本当のより良い世界を目指すものに繋がるのではないだろうか?

この映画で良く聞く「同意する」とはお互いの関係の中で信頼があり、相手を想う気持ちがあるからこそのものだと思う。最初と最後で聞こえるのはダミ声に変わりはないが、その言葉の意味の変化に注目して欲しい。

ポスターを見てもらえば分かるようにあのフォルムだからこそ、レーティングに引っかからないエロさ。ビートたけしの早撃ち、乱れ撃ちの格好良さは半端ない。あの世界観だからもっとゴア表現があっても良かったかなと思いました。

p.s
試写会でもビートたけしが何で日本語なんだという声が多く聞こえたけれども、キャスト陣に目を向けると多様な人種がある事を考えるとビートたけしのワガママは良い方向に向いてると思うのは自分だけでしょうか?
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