秀ポン

ソング・オブ・ザ・シー 海のうたの秀ポンのレビュー・感想・評価

3.1
ブレンダンとケルズの秘密が面白かったのでこれも期待していたんだけど、なぜだかこっちはそんなにだった。見方があんま良くなかったかも。
デフォルメの強いシルエットの、絵本っぽい絵柄。

ストーリーは、色んなところを経由して家に帰るって感じで安定している。
この安定感が物足りなく感じたのかもしれない。
絵柄も話もブレンダン〜の方が歪で、それがワクワクに繋がっていたんだろうなと思う。(らーめん才遊記のワクワク=アンバランス理論)
少なくとも前作の影響で、知らず知らずのうちにこの監督の映画にそういう歪さを求めていた(だから肩透かしを食らった)ってのはありそう。

光を追って仮装した子供の大勢乗ったバスに乗ったり、森の一角に、テレビとかの粗大ゴミと一緒に妖精岩が転がってたり、そういう伝承と生活が混ざり合った世界観はかなり好みだった。
物理的空間の上に伝承の層が乗っかっているような、ダイアナウィンジョーンズの銀のらせんを辿ればとか、それ系の児童文学みたいな感じ。

ラストの、妹の歌によって妖精達が魂?を取り戻すのは、伝承を歌うことで母を弔ってるんだろうか。
悲劇の伝承は、同じような悲劇に見舞われた遠い昔の誰か達が語り継いできたものであって、それに寄り添うことが残されたもの達の癒しにつながる?
と、KUBOみたいなことを考えたけど、しかしあっちのようにメタ構造が示唆されたわけではない。
シーン単位ではおぉ〜となったけど、ここまでのストーリーと直感的に繋がっている感じはしなかった。

父親がだいぶひでぇなと思いながら見ていたけど、最後まで彼の株が持ち直すことはなかった。

一個明確に不満なのは、嵐の海の荒々しさを全く感じなかった点。
この波に巻き込まれたら人間なんて木っ端だろ、と思わせるような描写がまるでなかった。
海中が穏やかなのは良い。しかし主人公も父親も波間をスイスイ泳いでしまっている。
せめて波にもみくちゃにされるとか、あとはせっかく穏やかな海中を描くのであれば、穏やかな海中から荒れた海面を見上げるような描写があったら最高だった。
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