このレビューはネタバレを含みます
ジャウム・コレット=セラ監督によるリーアム・ニーソン主演作では3作目となる作品。
「アンノウン」「フライト・ゲーム」「トレイン・ミッション」、ふたりのタッグ作品を本作にてコンプリートしたけれど、この3作目が一番良かった。
監督らしい演出が嬉しいスパイスとなり、更に殺し屋やマフィアといった素材を見事に引き立てていたと思う。
というのも、本来こういうジャンルは大好物ではない。
いわゆる正義と悪が対になるだけの単純明快な内容ではなく、現実世界にあるかもしれない非日常さが常識を無力化してしまうから。
映画の中の世界って数学に似ているなって考えることがある。
正義のヒーローがいて悪役を倒してハイ終わり、こんな分かり易い話は小学一年生で習う算数みたいなもの。
しかし複雑になればなるほど、解き明かす、理解するのが難解になる。
理解できなければ面白さに気付くことができなかったりする。
という例え話をしてはみたけど、本作は別に難解なストーリーというわけではない。
難解だと感じるのは、所感として「馴染みのあるマフィアもの」の物語のことである。
マフィアの世界が難しいなと特に思うのは、登場人物の思考パターン。
彼らって一般市民よりはきっと悪いことをしているのだろうけど、根っからの悪ばかりではないし、義理堅いし。
しかしプライドとか面目から生まれる沸点が常識では通用しなかったりするから、時に理解に苦しむことがあった。
ところが本作はそれらが簡潔明瞭に表現されていて、苦手かと思われていた内容が吸い込まれるように頭の中に入ってくれた。
これが監督の手腕によるものなのかは分からないけど、凄く新鮮な感覚を味わえたのは紛れも無い事実。
多種多様に感情移入できる点も評価に値した。
リーアム・ニーソン演じる父親のジミー、息子のマイク、マフィアのボスのショーン。
皆想いは違えど、揺るぎない信念にはどれも同情してしまった。
守りたいものは何なのか、信じるもの、成し遂げたいこと…。
残念な点は呆気なさが見受けられたことだけど、裏を返せば雑味がなくてマイナスには至らなかった。